教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

続・「1ヶ月で勝負」したクラスの記録 ~いのちかがやいて~⑯

映画「しばてん」の編集作業は、私の「冬休みの宿題」 になります。

「しばてん」を核とする全体としての映画「きらきら ~いのちかがやいて~」は、連凧を揚げるシーンの収録を残すのみです。

 

 

 

2005年12月15日。

連凧を揚げるタイミングは、「しばてん」で子どもたちの心が高まっている今しかありません。

 

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連凧を揚げるシーンは、映画のエンディングに使います。

12月15日、学校のある里に初雪が降った朝、100枚の連凧が澄み切った大空に舞いました。

100枚を揚げたところで記念写真を撮りました。この時点で糸の長さは150m、さらにこのあと100mの揚げ糸があります。

風を受けると子どもの力では持っていることも困難なほど引っ張られます。凧糸は細糸から太糸になり、揚げ糸の段階ではアルミ芯入りのビニール紐を使っています。それを二重手袋で揚げます。連凧は風が弱いと垂直方向に揚がり、風が強くなると水平方向に伸びます。一度揚げてしまうとまず落ちることはなく、100枚もあれば収納しながら下ろすのに20分ほどかかります。

 

「きらきら」№129,130に子どもの感想があります。

12月15日  連凧が揚がった
 今日は、急にグラウンドで凧を揚げることになった。初めてで、ドキドキした。みんなで、一つ一つ凧を出していって、青が全部出終わった。私たちは、先生の「せえの。」で放した。1回目は落ちた。もう1回した。「せえの。」で揚がった。びっくりして、「すごい。揚がった。」しか言えなかった。でもすごかった。次に、黄、緑、赤の順に出た。風もいいぐあいで全部揚がった。こんなにうれしいのは、久しぶりだった。みんなで力を合わせて作った凧が揚がってよかった。作ったかいがあった。無事に全部揚がって、よかったと思った。

  12月15日  連凧
 私たちが作った連凧が、今日、大空を舞った。とてもすごかった。凧が百枚ある。一つ一つに気持ちが込めてある凧は、勢いよく大空に舞っていった。すごくうれしかった。私たちの作った凧が、100枚一緒に揚がっている。さて、心の中のそれぞれの連凧は何枚まで揚がったのだろうか。卒業するまでに100枚揚げられるだろうか。

  12月15日  連凧揚がる
 1時間目からグラウンドへ連凧を揚げに行った。一人1枚ずつ凧を持った。先生の合図で手を放した。1回目、ドスッ。すぐに落ちてしまった。2回目、「揚がれ。」と心の中で思った。先生の合図で放した。ふわあと揚がった。「やったあ。」と思った。うれしかった。青・黄・緑・赤と順番に揚がっていった。すごくきれいだった。大空にきれいな連凧が揚がったので、今度は自分の心にきれいな連凧を揚げたい。

  12月15日  連凧揚がる
 今日、1時間目から連凧を揚げに近くのグラウンドに行った。グラウンドに着いて、箱から凧を出し、最初の青をみんな1つずつ持って、先生のかけ声でいっせいに放した。すると、「おおっ。」みんなの声とともに、みんなで頑張って作った連凧が大空に揚がった。嬉しかった。その後も、黄、緑、赤の凧を続けて揚げた。自分たちで作った凧が揚がっているのを見て、「うちのクラスも、あの凧みたいに全てつながっている立派なクラスになれるといいな。」と、私は思った。初めて見た連凧は、本当にきれいだった。

 

映画では、大空を舞う連凧を映し出し、テロップで子どもの文章を要約したものを紹介しました。BGMにさだまさしの「天までとどけ」を使わせてもらいました。「…舞いあがれ 風船の憧れのように 二人の明日 天までとどけ

映像的にはダラダラと長すぎる場面ですが、テロップが冒頭の討論に対する「答え」にあたります。

「しばてん」は答えを見つけるための道具、「連凧」は内面の思考を視覚的に見せるためのシンボルというのが私の「演出」。さて、映像はねらい通りに子どもたちに届きましたでしょうか。

 

 

  12月15日  大空に舞う連凧のように
 「1、2の3。」先生のかけ声とともに、私たちが作った100個の連凧の先頭集団が揚がった。だんだんと糸をのばしていき、100番目の凧が揚がった。とてもすごかった。なんだか感動した。あともう少し糸をのばせなかったのは残念だったが、連凧揚げは成功を収めた。さて、私たちの心の中の連凧はできているかというと、私はあと少しだと思う。映画作りで、「友だちって何だ」について一人一人が自分の考えをみんなに伝えたり、一生懸命演技をした。それは、「一人一人がしっかりとした凧になる」というめあてにだんだん近づいてきていると思う。その一人一人のしっかりした凧が、みんなで協力することによって、一つのすばらしい連凧になると思う。卒業まであと少し。私たちの心の中に連凧が揚がる日は、そう遠くはないはずだ。


子どもの日記を紹介した『きらきら』№130(2005.12.19)は、「心の中の『連凧』だって、きっと…」というタイトルになっています。

その中で私はこうコメントしました。

「12月15日、■■の里に初雪が降りました。透き通るような青空に、私たちの連凧が舞い上がりました。なんとも言いようのない感動が、一人ひとりの心を包んでいく、幸せな時間でした。最近の『きらきら』の繰り返しになりますが、きみたちはもはや2学期が始まった頃のきみたちではありません。きみたちは、もうぼくの力など必要としないほどに成長しました。大空に連凧が揚がった感動の一方で、心の連凧を思っていた人がこんなにもいたのです。心の連凧は、もう準備が整っていると、ぼくは感じています。あとは、いい風を待って、タイミングよく手を放せば(この間の1回目は、このタイミングが遅れたのです)、風をつかんで勢いよく舞い上がります。きっと…。3学期、風をつかむタイミングをじっと待ちましょう。」

クラスは動き始めると加速度的に変わっていきます。