教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

安倍教育改革の遺したもの(その8)

道徳の教科化①

 

安倍政権が教育に遺したものの代表は、教育基本法の「改正」と道徳の教科化です。

 

教科としての道徳は、第2次安倍政権の2015年3月27日の「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定,小学校学習指導要領の一部を改正する告示,中学校学習指導要領の一部を改正する告示及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の一部を改正する告示の公示並びに移行措置等について(通知)」によって学校現場に下りてきました。

1 改正の概要
(1)学校教育法施行規則の一部を改正する省令の概要
学校教育法施行規則において,小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部の教育課程における「道徳」を「特別の教科である道徳」と改正したこと。
なお,私立学校において,宗教をもって道徳に代えることができる特例について変更はないこと。
(2)学習指導要領の一部改正の概要
① 学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育に関することは,「第1章総則」に,道徳の時間に代えて位置付ける特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)に関することは,「第3章特別の教科道徳」にそれぞれ示したこと。

 

教科化が成ったのは第2次政権時ですが、第1次安倍政権の時から教科化に積極的に動いていました。時系列で追っていきます。

 

■2000年12月22日

教育改革国民会議報告「教育改革国民会議報告 -教育を変える17の提案-」

 

教育改革国民会議は、教育基本法の改正を提言した小渕恵三内閣総理大臣創設の諮問機関です。その最終報告「教育改革国民会議報告 -教育を変える17の提案-」において、道徳の教科化に言及しています。

学校は道徳を教えることをためらわない
 学校は、子どもの社会的自立を促す場であり、社会性の育成を重視し、自由と規律のバランスの回復を図ることが重要である。また、善悪をわきまえる感覚が、常に知育に優先して存在することを忘れてはならない。人間は先人から学びつつ、自らの多様な体験からも学ぶことが必要である。少子化核家族時代における自我形成、社会性の育成のために、体験活動を通じた教育が必要である。

提言

(1)小学校に「道徳」、中学校に「人間科」、高校に「人生科」などの教科を設け、専門の教師や人生経験豊かな社会人が教えられるようにする。そこでは、死とは何か、生とは何かを含め、人間として生きていく上での基本の型を教え、自らの人生を切り拓く高い精神と志を持たせる。

 

■2006年9月26日~2007年8月27日

 第1次安倍政権

 

■2007年6月19日

内閣府 経済財政諮問会議「経済財政改革の基本方針2007 ~「美しい国」へのシナリオ~」


経済財政諮問会議は、経済財政政策に関し、内閣総理大臣のリーダーシップを十分に発揮することを目的にして、2001年1月に内閣府に設置された合議制機関です。

つまり、安倍総理の「強いリーダーシップ」のもと作成されたのが「基本方針2007」です。

第4章 持続的で安心できる社会の実現

2.教育再生
およそ60 年ぶりの教育基本法の改正により、新しい時代の教育の基本理念が明確になった。…残された課題については、今後、教育再生会議において第三次報告に向けて検討するなど取組を進める。

【具体的な手段】

(2)心と体の調和の取れた人間形成
① すべての子どもたちに高い規範意識を身につけさせる取組
徳育を教科化し、現在の「道徳の時間」よりも指導内容、教材を充実


■2008年1月31日

教育再生会議「社会総がかりで教育再生を(最終報告)~教育再生の実効性の担保のために~」

 

教育再生会議は、安倍内閣教育再生への取組みを強化するため、2006年10月10日の閣議決定により内閣に設置した機関です。安倍総理が2007年8月27日に退陣したため、2008年1月31日の最終報告をもって解散しています。

(心身ともに健やかな徳のある人間を育てる)
徳育を「教科」として充実させ、自分を見つめ、他を思いやり、感性豊かな心を育てるとともに人間として必要な規範意識を学校でしっかり身に付けさせる。

 

■2012年12月26日

 第2次安倍政権発足

 

■2013年2月26日

教育再生実行会議 第一次提言「いじめの問題等への対応について」

 

教育再生実行会議は、教育の再生を議論し実行に移していくため、2007年1月15日の閣議決定により 首相官邸(内閣官房)に設置された諮問機関です。

子どもが命の尊さを知り、自己肯定感を高め、他者への理解や思いやり、規範意識、自主性や責任感などの人間性・社会性を育むよう、国は、道徳教育を充実する。そのため、道徳の教材を抜本的に充実するとともに、道徳の特性を踏まえた新たな枠組みにより教科化し、指導内容を充実し、効果的な指導方法を明確化する。 

 

■2013年12月26日

道徳教育の充実に関する懇談会「今後の道徳教育の改善・充実方策について(報告)
~新しい時代を、人としてより良く生きる力を育てるために~」

 

道徳教育の充実に関する懇談会は、道徳教育の充実について検討するため、2013年3月、文部科学省に設置された機関です。

道徳教育の要である道徳の時間を、例えば、「特別の教科道徳」(仮称)として新たに教育課程に位置付けることが適当と考える。


■2014年2月17日

中央教育審議会へ諮問

 

ここにきてようやく「正規」のルートに乗ってきます。

 

■2014年10月21日

中央教育審議会 道徳に係る教育課程の改善等について(答申)

 

道徳教育の重要性を踏まえ、その改善を図るため、学校教育法施行規則において、新たに「特別の教科」(仮称)という枠組みを設け、道徳の時間を「特別の教科 道徳」(仮称)として位置付ける。


■2015年3月27日

学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定
小(中)学校学習指導要領の一部を改正する告示

 

次回は、道徳教科化の深淵に迫ります。