教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

安倍教育改革の遺したもの(その10)

道徳の教科化③

 

「道徳科」の周辺探訪

 

教育基本法の改正と同様に、道徳教育の充実を求めて取り組んできた民間団体があります。その活動を追うとともに、それが安倍教育改革にどう絡んでいくのかも併せて検証していきたいと思います。いわば「道徳科」の周辺探訪です。

 

 

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 全国教育問題協議会(全教協)は、1977年に設立された民間団体です。

「美しい日本人の心」という言葉に会の理念が集約されるようです。平成29(2017)年の「活動の重点」や「決議文」を見れば、その具体的な中身をうかがい知ることができます。

道徳に関しては、「教育基本法、新学習指導要領に基づいた道徳教育の推進」を掲げています。

 

教育基本法改正に関しては、全教協ホームページに次のように記載されています。

教育基本法改正運動の口火を切り、その願いを実現させた。
  (社)全教協は、10年前の平成11年、活動の重点の一つとして「教育基本法改正運動」を民間団体として取り組んだ。会員の意見を集約し、国会議員全員に対するアンケート、文部科学省、国会議員・政党に対する要望を根気強く、しかも誠意を持って行った。
 
 特に、平成11年8月、各政党所属の国会議員をパネリストに迎え、「いまのままでよいのか、教育基本法」をテーマにして、東京都大田区にあるブライダルホテル、アペアでシンポジウムを開催、教育基本法の改正運動に火をつけた。
 
 以後、教育基本法の改正論議が燎原の火の如く燃え上り、政府与党はもとより、文部科学省、教育関係団体、有識者らが立ち上がり、平成十九年、安倍内閣の手により、戦後六十年間タブーとされてきた教育基本法が改正された。
 
 改正教育基本法には全教協が願った
 (一)愛国心の育成
 (二)日本の歴史・伝統の尊重
 (三)宗教教育の尊重
 (四)家庭教育の充実
 (五)教育行政の姿勢を正す
  という願いが実現したことを高く評価したい
 「継続は力なり」の言葉通り、地道ではあるが続ける努力の意義を実感したのである。

平成11(1999)年というのは、教育改革国民会議教育基本法改正を提言する1年前です。

教育基本法改正で果たそうとした「願い」と推進を求める「道徳教育」は、見事に重なり合っています。

ちなみに、教育再生会議(2006年11月8日)で担当事務局として「教員免許更新制の導入」を説明していた山谷えり子総理補佐官(参議院議員)は、全教協の2016年度役員名簿では「顧問」となっていました。

 

 

 

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「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)は、 2003年1月に設立された団体です。会長は西澤潤一氏(大正15年宮城県生まれ。東北大学総長、教育課程審議会副会長・岩手県立大学長、首都大学東京学長などを歴任)です。

2005年10月に出版された『学校教育の再生日本の教育改革をどう構想するか 民間教育臨調の提言』において、「道徳教育と宗教的情操の涵養の強化」をうたっています。

 

民間教育臨調は、「新しい歴史教科書をつくる会」と「新しい教育基本法を求める会」が発展的に合流してできた会です。

新しい歴史教科書をつくる会」は、 1997年に結成された日本の社会運動団体。『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』を出した会です。

結成時の中心は、西尾幹二氏(初代会長)、藤岡信勝氏(副会長)です。

民間教育臨調で教育制度部会長に就く小林正氏は、2006年9月から2007年5月まで会長を務めています。

平沼赳夫氏や現文科大臣である萩生田光一氏など保守政治家から強く支持されていました。

「新しい教育基本法を求める会」は、西澤潤一氏を会長として2000年に結成された会です。

 

 

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 日本教育生成機構は、2006年に新しい歴史教科書をつくる会から分かれて発足した会です。理事長の八木秀次氏は、2004年9月から2006年2月まで歴史教科書をつくる会の会長でした。

会としては道徳の教科化を提言し、八木氏個人としては安倍内閣の「教育再生実行会議」の委員として「教育政策を方向づけ、後押しするために、民間のタウンミーティングの開催や政策提言をしています」と、会のホームページに記していました。

 

 

安倍氏と直接の関係があるわけではありませんが、安倍内閣の閣僚になる人たちが深く関与していたり、あるいはまた安倍内閣の諮問機関の委員であったり、何となく影が見え隠れしています。

このあたりは、次回でもう少し掘り下げます。