教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

基礎・基本と「応用」 ~アクティブ・ラーニング考~ ①

言葉だけが一人歩きしていた「アクティブ・ラーニング」は、学習指導要領(平成29年3月告示)で「主体的・対話的で深い学び」として学校現場に下りてきました。

 

小学校学習指導要領(平成 29 年告示)
平成 29 年 3 月 告示


第1章 総則


第3 教育課程の実施と学習評価


1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善


 各教科等の指導に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
⑴ 第1の3の⑴から⑶までに示すことが偏りなく実現されるよう,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと。
 特に,各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり,思考力,判断力,表現力等や学びに向かう力,人間性等を発揮させたりして,学習の対象となる物事を捉え思考することにより,各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)が鍛えられていくことに留意し,児童が各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程を重視した学習の充実を図ること。

 

 

小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説
平成 29 年7月

 
総則編


第3章 教育課程の編成及び実施


第3節 教育課程の実施と学習評価


1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善
(1) 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善(第1章第3の1の (1))

 

(前略)

 児童に求められる資質・能力を育むために,児童や学校の実態,指導の内容に応じ,「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の視点から授業改善を図ることが重要である。

 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の具体的な内容については,中央教育審議会答申において,以下の三つの視点に立った授業改善を行うことが示されている。教科等の特質を踏まえ,具体的な学習内容や児童の状況等に応じて,これらの視点の具体的な内容を手掛かりに,質の高い学びを実現し,学習内容を深く理解し,資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすることが求められている。
① 学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているかという視点。
② 子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかという視点。
③ 習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているかという視点。

(後略)

 

理念としての「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」は理解できます。

 

平成29年3月告示の学習指導要領は、今年度から完全実施されています。

そのスタート時にコロナ禍休校があって、移行期間の先行実践を踏まえても、取り組みはまだこれからというところでしょう。

 

 

ところで、前出「解説」の「後略」部分にこんな一節があります。

 

単元や題材など内容や時間のまとまりを見通した学習を行うに当たり基礎となるような,基礎的・基本的な知識及び技能の習得に課題が見られる場合には,それを身に付けさせるために,児童の学びを深めたり主体性を引き出したりといった工夫を重ねながら,確実な習得を図ることが求められる

 

たとえば算数科においては、「数学的な見方・考え方を働かせながら,日常の事象を数理的に捉え,算数の問題を見いだし,問題を自立的,協働的に解決し,学習の過程を振り返り,概念を形成するなどの学習の充実を図ること」を「主体的・対話的で深い学び」として具体例示しています。

こうした高次な「単元や題材など内容や時間のまとまりを見通した学習」を行うには、その基礎となる「基礎的・基本的な知識及び技能」が必要です。

その「基礎的・基本的な知識及び技能の習得に課題が見られる場合には」、「確実な習得を図ることが求められる」と、至極当たり前のことをさらりと述べているわけです。

 

ここで、学校現場が抱える古くて新しい問題に遭遇します。

それは、「基礎・基本」と「応用」の悩ましい関係です。

「主体的・対話的で深い学び」は間違いなく「応用」の範疇です。

基礎的・基本的な知識及び技能の習得」に著しい課題が存する場合、「主体的・対話的で深い学び」の扱いはどうすればいいのでしょう。

 

次回、「基礎・基本」と「応用」の扱いについて考えます。