教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

元小学校教員による小中連携授業⑨ オプションを外せ

2019年度、地元の中学校の1年生を対象に行った元小学校教員による小中連携授業の記録です。
ゲストティーチャーという位置づけで、総合的な学習の時間のコマを使って年間15回の「授業」を行いました。


第9回 オプションを外せ

第9回は10月下旬、「オプションを外せ」シリーズの初回として実施しました。

 

今回のテーマは、放課後学習教室で2018年5月に配ったプリントがベースになっています。 

  

「わかる」ことを「できる」ことに

 

 わからないからできないというのは、その時点では仕方のないことだ。でも、わかっているのにできないというのは、あまりにももったいない。「わかる」こと=「できる」ことに近づけていく方策はいくつもある。今回は、放課後学習でずっと気になっていたことの1つを紹介したい。

 

■「オプション」を外せば「基本のカタチ」に
 教科は数学。おっとその前に、小学校の算数の話をしよう。
 5年生で小数の割り算(筆算)を習う。結構つまずいてしまうところだ。ところが、本当はとても簡単。小数の割り算で新たに身につけるワザは、「割る数の小数点をとって整数にする」ということだけだ。整数にすれば、4年生でさんざん練習した割り算の筆算に変身する。
 ここでは「小数点」が「オプション」で、「整数」が「基本のカタチ」である。「オプション」を外して「基本のカタチ」にする--算数・数学の計算問題を解くキホンの“キ”なので覚えておこう。
 さて数学。1年生で登場する負の数は、数学最初の関所。でも負の符号というオプションを外せば、小学校低学年の算数に変身する。減法というオプションは符号をかえれは加法という基本のカタチに変身する。除法というオプションも乗法という基本のカタチに変身する。
 基本のカタチは少ない方が労力もミスも減らせる。あとは、オプションの外し方をマスターすればいい。1年生諸君、正・負の数も次の文字式もそのことを徹底的に意識して学んでほしい。最初が大事なんだ。

 

■途中の計算を必ず書こう
 ①オプションを外す→②基本のカタチに整理する→③計算する
 1年生が使っている問題集は、このパターンで解答するように編集されている。青字で親切にアドバイスまでしている。ところが次の応用問題になると、「同じ方法で解きなさい」とわざわざアドバイスしてあるのに、パターンを無視していきなり答えを書く人がいる。一見して簡単だと高をくくっているのだろうが、発展問題というオプションが2つ3つと重なった問題になった途端にできなくなる人を去年も多数見てきた。簡単でも面倒を避けては駄目だ。ミスというリスクを回避するための「保険」だと思ってほしい。
 基本の解答パターンは、少なくともその単元が終わるまでは続けてほしい。それは、すべてのオプションが出尽くすのを見極めるためだ。その後は自分の習得度に応じて省けるところは省いてもいい。じつは省略のワザは「③計算する」で磨いてほしいのだけれど、こんかいは“省略”。

 

■小さすぎる字はミスを誘う
 シャープペンシルを使うようになっても、書字の基本は小学校時代と何ら変わらない。極端に小さい字を書く人が結構いるが、はっきり言うとミスが増える。丁寧な字を書く。横式では=(イコール)の位置を揃える、筆算では桁を揃える。すべてミスというリスク回避のためのちょっとした「保険」だ。

 

この「基本」と「オプション」の考え方は、現役時代の試行錯誤にあります。

どれほど丁寧に指導したつもりでも、学習したことが容易に定着していかない子がいます。そうした子たちの学びを考えたとき、覚えるべき内容ができるだけ少ないこと、課題解決のプロセスができる限り単一でパターン化されていることが必要だと思い至りました。ここでやろうとしていることは、その延長線上にあります。

 

f:id:yosh-k:20200518093014j:plain

f:id:yosh-k:20200518093259j:plain

f:id:yosh-k:20200518093344j:plain

基本の「き」をどこまで汎用性のあるカタチで提供できるかが、教師の腕の見せどころ。眼力が試されます。 

 

 

「オプションを外せ」シリーズは、第9回から第15回まで実施しました。

第9回 正の数・負の数

第10回 正の数・負の数

第11回 文字と式

第12回 文字と式

第13回 方程式

第14回 方程式

第15回 総合

これらはすべて中学校の学習内容ですので省略します。

 

なお最終の第16回に「大人になる旅」という人生講座を予定していましたが、コロナ禍休校のため幻に終わりました。