教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その5) ことわざ「虻蜂取らず」

小学校3・4年生の教科書に登場することわざの第2回は「虻蜂取らず」です。教科書の表記は、「あぶはち取らず」となっています。

 

 

虻蜂取らず

 

「虻蜂取らず」の読み方

あぶはちとらず

 

「虻蜂取らず」の意味

あれもこれもとねらって一物も得られないこと。欲を深くして失敗するのにいう。(広辞苑

 

「虻蜂取らず」の使い方

Wiktionary日本語版」に、 相馬愛蔵 『私の小売商道』の一節が紹介されています。

いくらよい品を作っても、そう急に認められるものではないし、相当永い間の辛抱を要する。だからたいがいの人が辛抱しきれなくなって最初の方針を破ってしまうのだが、そこで方針をかえるということは、結局今までの犠牲が虻蜂とらずに終るばかりでなく、かえって信用をおとす結果となる。

 

「虻蜂取らず」の語源・由来

「ことばの語源やルーツを探ろう」のページより引用します。

虻蜂取らずの語源は、「虻も取らず蜂も取らず」が簡略化された語で、その主人公はクモだといわれています。

クモの網に虻がかかったのを見て取りに行こうとしたところ、蜂もクモの巣にかかったので、今度は虻を放っておいて蜂を取りに行こうとします。

どちらも気にかかってどちらから取りにいこうと迷っていると、虻にも蜂にも逃げられてしまい、結局どちらも取れなくなってしまうことから、ひとつのことに専念すれば良いのに、同時にいくつかのものを狙ったために何も得られず、失敗することのたとえとなったようです。

どんなものでも、力を二分すればひとつひとつの力は弱くなるもので、数多くのことを望みすぎて、結局得ることが少なかったり、無になったりする例はよくあることです。

 

 

「虻蜂取らず」の蘊蓄

【「虻蜂取らず」の類語】

類語でよく知られているのが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。

「二兎を追うものは一兎をも得ず」は、ローマが由来といわれる英語のことわざを日本語に訳した言葉です。

元となる英語のことわざは

If you run after two hares you will catch neither

となります。

 

その他の類語には、

一も取らず二も取らず/心は二つ身は一つ/大欲は無欲に似たり/花も折らず実も取らず/右手に円を描き、左手に方を描く/欲の熊鷹股裂くる/欲張って糞垂れる/欲は身を失う

などがあります。(出典「故事ことわざ辞典」)

 

【「虻蜂取らず」の対義語】

対義語には、「一石二鳥」「一挙両得」などがあります。