教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その4) ことわざ「頭隠して尻隠さず」 

小学校3・4年生の教科書に登場することわざの第1回は「頭隠して尻隠さず」です。教科書の表記は、「頭かくしてしりかくさず」となっています。

 

 

頭隠して尻隠さず

 

「頭隠して尻隠さず」の読み方

あたまかくしてしりかくさず

 

「頭隠して尻隠さず」の意味

一部の悪事や欠点を隠して、全体をうまく隠したつもりでいる愚かさをいう。(広辞苑

 

「頭隠して尻隠さず」の使い方

「TRANS.Biz」のホームページに紹介されている用例が、とても的を射ています。

「頭隠して尻隠さず」はからかいやあざ笑いのニュアンスで使う

「頭隠して尻隠さず」の言葉は、本人は全て隠しているつもりであるにも関わらず、周辺にばれている状態のとき使います。

一部だけしか隠していないのに「全て隠せている」と考えている愚かさや、わざわざばれるような行動をしている甘さに対する、からかいやあざ笑いのニュアンスをも含んでいます。

したがって、良い行いをしているにも関わらず謙遜の気持ちなどを理由に隠していることが周囲にばれている場合には、「頭隠して尻隠さず」の言葉を使うのは適していません。

「頭隠して尻隠さず」を使った例文

  • あの二人は付き合っていることを隠しているつもりらしいが、お弁当のおかずが同じことをみんなはとっくに気づいている。頭隠して尻隠さずとはこのことだね。
  • 夫に内緒で高級ホテルのランチに出かけたことがばれてしまった。頭隠して尻隠さずで、ホテルのラウンジのケーキをお土産に買ってきてしまったからだ。
  • 医者からアルコールを止められている父は、我慢できずに会社帰りに駅で缶ビールを飲むことにしたらしい。父はばれないと自信を持っていたが、アルコール臭がすることに当然母は気づいており、頭隠して尻隠さずとしか言いようがない。

 

 「頭隠して尻隠さず」の語源・由来

「頭隠して尻隠さず」の語源は、雉(キジ)の習性にあります。

雉は危険を感じると、草むらに身を隠します。隠れる際に頭を草むらに突っ込むのですが、長い尾は隠れきれずに見えています。その様が語源になっています。

 

「頭隠して尻隠さず」の蘊蓄

蔵頭露尾」(ぞうとうろび)という四字熟語は、「頭隠して尻隠さず」と同じ意味です。

また、「頭隠して尻隠さず」の類義語に、雉が登場するものがいくつもあります。

頭を隠して尾をあらわす頭隠して尻を出す/柿を盗んで核を隠さず/頭隠して尾を出す雉の隠れ雉子の草隠れ/団子隠そうより跡隠せ/蚤の隠れたよう/身を隠し陰を露す/辣韮食うて口を拭う

 

雉が登場することわざには、「雉も鳴かずば撃たれまい」というのもあります。

これは、雉は鳴かなければ居所を知られず、撃たれることもなかったのにという意味から、無用な発言をしたために自ら災いを招くことをいいます。

 

どうも雉はいい意味合いでは登場しません。

しかし、ここに出てくるような姿は誰にもありがちなものです。雉が人々の生活圏のすぐ隣にいる身近な鳥であったからこそ、雉に我が身を映し見ていたとも言えますね。