教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その17) 故事成語「守株」

小学校3・4年生の教科書に登場する故事成語の第6回は「守株」です。

 

 

守株

 

「守株」の読み方

しゅしゅ

 

「守株」の意味

古い習慣を固守して時に応ずる能力のないこと。少しの進歩もないこと。株(くいぜ)を守る(広辞苑

 

「守株」の使い方

年齢を重ねると、どうも守株になっていく

 

「守株」の語源・由来

出典は『韓非子』(かんぴし)の「五蠹」(ごと)です。

 

宋人有耕田者。田中有株。兎走触株、折頸而死。因釋其耒而守株、冀復得兎。兎不可復得、而身為宋国笑。

 

宋人に田を耕す者有り。田中(でんちゅう)に株(かぶ)有り。兎(うさぎ)走りて株に触れ、頸(くび)を折りて死す。因(よ)りて其(そ)の耒(らい)を釋(す)てて株(かぶ)を守り、復(ま)た兎を得んことを冀(こいねが)ふ。兎復た得(う)べからずして、身(み)は宋国(そうこく)の笑(わら)ひと為(な)れり。

 

(現代語訳)

宋の国の人で、田を耕している人がいた。その田んぼの中に、木の切り株があった。そこへ兎が走ってきて切り株にぶつかり、首すじを折って死んだ。そこで(この男は)自分の耒(すき)を捨てて切り株を見守り、もう一度兎を得ようと切望した。(しかし)兎は二度とは手に入れることができず、自分自身は宋の国じゅうの笑いになってしまった。

 

「守株」の蘊蓄

「守株」の四字熟語

守株待兎(しゅしゅたいと)

 

「守株」のことわざ

株を守りて兎を待つ

 

「守株」の慣用句

「株を守る」(くいぜをまもる)

 

 

「守株」と「待ちぼうけ」

北原白秋作詞、山田耕筰作曲「待ちぼうけ」

 

待ちぼうけ 待ちぼうけ
ある日せっせと 野良かせぎ
そこへ兎が飛んで出て
ころり ころげた 木のねっこ

待ちぼうけ 待ちぼうけ
しめた これから寝て待とか
待てば獲ものは 駆けて来る
兎ぶつかれ 木のねっこ

待ちぼうけ 待ちぼうけ
昨日鍬とり 畑仕事(はたしごと)
今日は頬づえ 日向ぼこ
うまい伐(き)り株 木のねっこ

待ちぼうけ 待ちぼうけ
今日は今日はで 待ちぼうけ
明日は明日はで 森のそと
兎待ち待ち 木のねっこ

待ちぼうけ 待ちぼうけ
もとは涼しい黍畑(きびばたけ)
いまは荒野(あれの)の箒草(ほうきぐさ)
寒い北風 木のねっこ

 

この童謡の「原作」が、『孟子』の「守株」だったのです。

阿辻哲治著『故事・ことわざ・四字熟語 教養が試される100話』(青春文庫、2017年)で知りました。