教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

いまさら聞けない SDGs ②SDGsと教育

今回のテーマは、「SDGsと教育」です。

 

SDGsには、「17の目標」があります。

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17の目標は、21世紀の世界が抱える課題を包括的に挙げたものです。

 

目標の「4」が教育に関するものです。

4 質の高い教育をみんなに (Quality Education) - 「すべての人々へ包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」

Goal 4
Ensure inclusive and equitable quality education and promote lifelong learning opportunities for all

 

17の目標をより具体的にしたものが、「169のターゲット」です。

目標4は10のターゲットで構成されています。

 

「4-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「4-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。

 

4: すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する


・4.1 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。


・4.2 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。


・4.3 2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。


・4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。


・4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。


・4.6 2030年までに、すべての若者及び大多数の成人が男女ともに、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。


・4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、世界的・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。


・4.a 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。


・4.b 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術 (ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。


・4.c 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。

 

教育に関する「ターゲット」と「指標」の原文と仮訳文を、総務省のホームページから引用します。

ターゲット 指標(仮訳)
4.1   2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
By 2030, ensure that all girls and boys complete free, equitable and quality primary and secondary education leading to relevant and effective learning outcomes
4.1.1   (i)読解力、(ii)算数について、最低限の習熟度に達している次の子供や若者の割合(性別ごと)
(a)2~3学年時、(b)小学校修了時、(c)中学校修了時
Proportion of children and young people: (a) in grades 2/3; (b) at the end of primary; and (c) at the end of lower secondary achieving at least a minimum proficiency level in (i) reading and (ii) mathematics, by sex
4.2   2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
By 2030, ensure that all girls and boys have access to quality early childhood development, care and pre-primary education so that they are ready for primary education
4.2.1   健康、学習及び心理社会的な幸福について、順調に発育している5歳未満の子供の割合(性別ごと)
Proportion of children under 5 years of age who are developmentally on track in health, learning and psychosocial well-being, by sex
4.2.2   (小学校に入学する年齢より1年前の時点で)体系的な学習に参加している者の割合(性別ごと)
Participation rate in organized learning (one year before the official primary entry age), by sex
4.3   2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
By 2030, ensure equal access for all women and men to affordable and quality technical, vocational and tertiary education, including university
4.3.1   過去12か月に学校教育や学校教育以外の教育に参加している若者又は成人の割合(性別ごと)
Participation rate of youth and adults in formal and non-formal education and training in the previous 12 months, by sex
4.4   2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
By 2030, substantially increase the number of youth and adults who have relevant skills, including technical and vocational skills, for employment, decent jobs and entrepreneurship
4.4.1   ICTスキルを有する若者や成人の割合(スキルのタイプ別)
Proportion of youth and adults with information and communications technology (ICT) skills, by type of skill
4.5   2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
By 2030, eliminate gender disparities in education and ensure equal access to all levels of education and vocational training for the vulnerable, including persons with disabilities, indigenous peoples and children in vulnerable situations
4.5.1   詳細集計可能な、本リストに記載された全ての教育指数のための、パリティ指数(女性/男性、地方/都市、富の五分位数の底/トップ、またその他に、障害状況、先住民、紛争の影響を受けた者等の利用可能なデータ)
Parity indices (female/male, rural/urban, bottom/top wealth quintile and others such as disability status, indigenous peoples and conflict-affected, as data become available) for all education indicators on this list that can be disaggregated
4.6   2030年までに、全ての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
By 2030, ensure that all youth and a substantial proportion of adults, both men and women, achieve literacy and numeracy
4.6.1    実用的な(a)読み書き能力、(b)基本的計算能力において、少なくとも決まったレベルを達成した所定の年齢層の人口割合(性別ごと)
Proportion of population in a given age group achieving at least a fixed level of proficiency in functional (a) literacy and (b) numeracy skills, by sex
4.7   2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
By 2030, ensure that all learners acquire the knowledge and skills needed to promote sustainable development, including, among others, through education for sustainable development and sustainable lifestyles, human rights, gender equality, promotion of a culture of peace and non- violence, global citizenship and appreciation of cultural diversity and of culture’s contribution to sustainable development
4.7.1   ジェンダー平等および人権を含む、(i)地球市民教育、及び(ii)持続可能な開発のための教育が、(a)各国の教育政策、(b) カリキュラム、(c) 教師の教育、及び(d)児童・生徒・学生の達成度評価に関して、全ての教育段階において主流化されているレベル
 Extent to which (i) global citizenship education and (ii) education for sustainable development, including gender equality and human rights, are mainstreamed at all levels in (a) national education policies, (b) curricula, (c) teacher education and (d) student assessment
4.a   子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
Build and upgrade education facilities that are child, disability and gender sensitive and provide safe, non-violent, inclusive and effective learning environments for all
4.a.1   以下の設備等が利用可能な学校の割合
(a)電気、(b)教育を目的としたインターネット、(c)教育を目的としたコンピュータ、 (d)障害を持っている学生のための適切な設備・教材、 (e)基本的な飲料水、(f)男女別の基本的なトイレ、(g)基本的な手洗い施設(WASH指標の定義別)
Proportion of schools with access to: (a) electricity; (b) the Internet for pedagogical purposes; (c) computers for pedagogical purposes; (d) adapted infrastructure and materials for students with disabilities; (e) basic drinking water; (f) single-sex basic sanitation facilities; and (g) basic handwashing facilities (as per the WASH indicator definitions)
4.b   2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、並びにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
By 2020, substantially expand globally the number of scholarships available to developing countries, in particular least developed countries, small island developing States and African countries, for enrolment in higher education, including vocational training and information and communications technology, technical, engineering and scientific programmes, in developed countries and other developing countries
4.b.1   奨学金のためのODAフローの量(部門と研究タイプ別)
Volume of official development assistance flows for scholarships by sector and type of study
4.c   2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。
By 2030, substantially increase the supply of qualified teachers, including through international cooperation for teacher training in developing countries, especially least developed countries and small island developing States
4.c.1   各国における適切なレベルでの教育を行うために、最低限制度化された養成研修あるいは現職研修(例:教授法研修)を受けた (a)就学前教育、(b)初等教育、(c)前期中等教育、(d)後期中等教育に従事する教員の割合
Proportion of teachers in: (a) pre-primary; (b) primary; (c) lower secondary; and (d) upper secondary education who have received at least the minimum organized teacher training (e.g. pedagogical training) pre-service or in-service required for teaching at the relevant level in a given country

 

 

他の目標がそうであるように、教育に関する目標もまた、一見すると途上国の課題のように見えます。事実、途上国には解決しなければならない課題が山積しています。

 

それでは、日本には取り組むべき課題はないのでしょうか。

 

4.1 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。

4.1.1   (i)読解力、(ii)算数について、最低限の習熟度に達している次の子供や若者の割合(性別ごと)
(a)2~3学年時、(b)小学校修了時、(c)中学校修了時

途上国の困難さと同じ「ものさし」で測っていては、日本の課題は見えてきません。

しかし、「適切かつ効果的な学習成果をもたらす」「質の高い初等教育」を「すべての子ども」に届けられているかと言われると、はてなマークがつきます。「(i)読解力、(ii)算数」の「最低限の習熟度」を仮に60%(100点満点のテストで60点)としたとき、間違いなく取り残されている子がいます。教科書を含む教材、教師の指導法等々、改善すべきことは多々ありそうです。

 

4.2   2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。

保育園の待機児童の問題は今なお解消されていません。2020年4月1日時点での待機児童数は、1万2439人です。

 

4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

4.4.1   ICTスキルを有する若者や成人の割合(スキルのタイプ別)

ICTスキルを有する若者や成人」の育成は、まさにこれから取り組みが始まろうとしている課題です。(「雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能」の指標を「 ICTスキル」1つに代表させてしまうのもどうかと思いますが)


4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。

親の経済格差が子どもの学力格差になっている現実、不登校児童・生徒の問題、教室でのいじめなど、大きく括れば「脆弱な立場にある子ども」です。「脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする」というのは、日本においても重い課題です。


4.6 2030年までに、すべての若者及び大多数の成人が男女ともに、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。

4.6.1    実用的な(a)読み書き能力、(b)基本的計算能力において、少なくとも決まったレベルを達成した所定の年齢層の人口割合(性別ごと)

これを識字率の問題として捉えるならば、ほぼ満足できるレベルだと思います。しかし、「すべての若者及び大多数の成人」を「日本人」に限定せず、「日本に暮らす人々」とすると、「実用的な(a)読み書き能力」を持たない人たちが多数存在します。夜間中学に学ぶ生徒さんの多くが、日本で暮らす外国人労働者です。これに対する根本的な施策は皆無の状態です。


4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、世界的・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。

4.7.1   ジェンダー平等および人権を含む、(i)地球市民教育、及び(ii)持続可能な開発のための教育が、(a)各国の教育政策、(b) カリキュラム、(c) 教師の教育、及び(d)児童・生徒・学生の達成度評価に関して、全ての教育段階において主流化されているレベル

これは、これからの教育内容の大きな柱になると思われます。現実の日本は、世界で一流の「人権後進国」。国や文科省に期待するのは「ない物ねだり」に等しいです。現場の教師の「本気」が試されている、と私はみています。

 

4.a   子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。

4.a.1   以下の設備等が利用可能な学校の割合
(a)電気、(b)教育を目的としたインターネット、(c)教育を目的としたコンピュータ、 (d)障害を持っている学生のための適切な設備・教材、 (e)基本的な飲料水、(f)男女別の基本的なトイレ、(g)基本的な手洗い施設(WASH指標の定義別)

(b)教育を目的としたインターネット」「教育を目的としたコンピュータ」は、GIGAスクール構想で実現しつつあります。ソフト面や指導面を含めた「効果的な学習環境」をいかに構築できるかがこれからの課題です。

子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設」ということでは、たとえばトイレのあり方、図書館(室)のあり方、更衣室のあり方、ランチルームのあり等々、改良の余地は随所にあります。

 

こうして見ていくと、ざっくりと概観しただけでも、日本の教育の課題はいくつもあります。

じっくり腰を据えて精査し、地に足のついた取り組みが望まれます。