教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その29) 慣用句「型にはまる」

小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第12回は「型に嵌まる」です。教科書の表記は、「型にはまる」となっています。

 

型にはまる型に嵌まる

 

「型に嵌まる」の読み方

かたにはまる

 

「型にはまる」の意味

世間一般の方式に従っていて、独創性・新鮮味がない。(広辞苑

 

「型に嵌まる」の使い方

型に嵌まったあいさつ

 

 

「型に嵌まる」の蘊蓄

「型に嵌まる」という慣用句は、あまりいい意味では使われません。逆に、「型を破る」「型破り」は、積極的な意味合いで使われることが多いです。

そんな「型」の深いはなしを紹介します。「kreo」に掲載された市川武也氏の文章です。

WEBで読める! 最新SP講座 2014.1.31

 

型があるから型破り。型が無ければ、それは形無し。

 

型を超えて出来ること、そこにチャレンジしてみる。


                             市川 武也

 


私はワークショップや研修を行う際に、時々歌舞伎役者の中村勘三郎さんの話をします。
私の世代では、「勘三郎さん」と言う名前よりも「勘九郎さん」(46年間この名前を名乗られていましたから)と呼ばせていただく方がしっくりと来ます。
現在、歌舞伎の世界で活躍されている6代目中村勘九郎さんのお父さんであり、18代目中村勘三郎さんです。
勘三郎さんは2012年に57歳と言う若さで亡くなり、各界や彼に親しみを持っていた多くの人たちは、その早すぎる別れに肩を落としました。
勘三郎さんは、生前に歌舞伎を沢山の人に知ってもらい楽しんでもらおうと、シアターコクーンで「コクーン歌舞伎」として新しい演出を取り入れたり、ニューヨークで「平成中村座」を上演するなど、当時ニューヨークタイムズ紙に「(その頃上映中の)大作映画よりも遥かにエキサイティングでおもしろい」と絶賛されるなど、新しい歌舞伎のあり方にチャレンジしていました。

 

ある日、そんな活動をする勘三郎さんの取材に来た記者が「勘三郎さんの演技は型破りですね」そう語りかけたところ勘三郎さんは「なに言ってやんでい!型破りって言うのはなあ、型があるから型破り。型が無ければそいつは単なる形無しなんだよ!」と話したそうです。
この話を聞いたときに、「実におもしろい」と私は何度も頷いてしまいました。

 

「型があるから型破りが出来る」「型が無ければ単なる形無し」

 

自分自身にとっての「型破り」とは何でしょうか?
企画やクリエイティブに携わる人たちに、同じ問いを投げ掛けます。

 

広告や販売促進における型について。


広告業界において、この20年から30年大きな変化がありました。以前は「コピーやクリエイティブの力」が商品の認知や購買に非常に影響を与えていたように感じます。

 

百貨店では「おいしい生活」(西武百貨店)
自動車では「くうねるあそぶ。」(日産自動車)
化粧品では「一瞬も、一生も、美しく」(資生堂)

 

そして今から20年ほど前、携帯電話が登場して、その後個人が触れる情報量が飛躍的に伸び始めると、言葉やヴィジュアルにより伝わる力が、それ以前の時代よりもフラット(影響力が減少)になり、人は更なる新しい刺激を求める様になりました。

 

販売促進(セールスプロモーション)においても同じような変化があり、キャンペーンやイベントにおける刺激や体現するよろこびや発見の、その後の効果の度合いが変わって来ました。

 

広く伝えること、売上げを促進すること、これらにおける「型」は、取り組む企業の特徴そのものだと思います。
テレビや新聞と言ったマス・メディアを多く扱う広告代理店であれば、テレビや新聞の視聴者や購読者が減って、視聴率や購読率が下がっている現代において、如何に関心を持ってもらい、そのメディアを介した情報を視聴者や購読者に効果的にリーチ(到達したり、理解して貰ったり)する方法にこだわりを持つこともひとつの「型」と思います。

 

販売促進の仕事に長年関わる私たちにとっても、この「型」についての考え方はとても重要です。
食料品や日配品などの企画・販売促進に取り組む場合、そうした商品の展開のあり方や、小売業のマーケティング目標、競合商品との関係、そして何よりも買い物をする人の意識(ショッパーインサイト)や買い物行動の捉え方など様々な要素があります。

 

こうした事を念頭に置きながら、業種や業態の異なる企業の課題に向き合う時に、流通小売業(リテール)やメーカー企業のマーケティング活動に関する細部〈ディテール〉にこだわると言うのは私たちの「型」だと思っています。
流通小売業の潮流や課題に精通をされている『商人舎』の結城義晴氏は、講演や著書の中で「Retail is Detail」と表現されています。

 

この言葉の意味するものは、「小売りの神は細部に宿る」。

 

私はマーケティングや販促活動で課題を捉える際、販売の現場や買い物客とのタッチポイント<接点>の捉え方こそが全てと思っているところがありました。
しかし今、お店に来店されるお客様の買い物の行動が変わって来たり(ネットショッピングの利用や、新しいタイプのお店やサービスの出現から)、購買への影響(ブランドに関する意識の変容)が「新しいメディアやコミュニケーション」を含む環境にあるのであれば、こだわりを持って考えていたもくろみは、ある枠の中だけの考えと感じる様になりました。

 

「型」を意識して大事にしながらも、その「型」を超える発想を持つことが、これからの時代に求められている、そう考えます。

 

「型」を超えようとする時のきっかけの呪文 『そもそも』


課題を整理しようとか、掴もうとかする際、また、何か新しい兆しの種を見つけようとする際に、この『そもそも』を繰り返すことはとても有効です。

 

「こう言うものだと思い込んでいるもの」「全ての人がそうしている」こうした概念の中から、隠れている本質をあぶり出したり、新しいきっかけをつくる時に、紐解くための<呪文>のように使います。

 

では、「買い物をする人」を捉えて、この<呪文>を唱えると何が導けるかを考えてみます。

 

買い物をする人の多くは、店舗で買い物商品を決定する


スーパーなどで食品や日用品を買い物をする人の商品決定は「お店に来てからや、商品を売場の棚などで見てから」が約3割と言われます。
新聞に折り込まれるチラシの「日替わりセール」や「お買い得の品」に注意を払いながらも、マスメディアに掲載される情報は余り関与していないと言われます。
このことは、既に流通小売業やそこで取引をする多くの事業会社(主にメーカー)も、そして広告代理店も理解をしていることです。
以前は、取引を行う商談の中で事業会社は「この商品の発売にあたり、コマーシャルをこのくらい投下します(GRP:世帯視聴率の合計を示したり)」とか「売り場でも合わせてキャンペーンの企画を用意します」と言った内容が常套句でした。

 

コマーシャルは購買に余り関与されていないからと言って(そう結論づけてしまうことで)コマーシャルを行わないことは商品のブランディングが成り立ち難い環境をつくり、キャンペーンを行わないことは現場(売り場)で何も行わないことになる、そう捉えられて本当の課題が見過ごされて来ました。

 

そもそも、買い物をする人は何で選ぶのか?


この買い物をする人(主婦であっても、シニアであっても、単身者であっても)を「そもそも」から掘り下げてみます。

 

○メディアで知ることは何か?メディア以外で知ることは何か?
○お店も、商品も、サービスも何と比べているのか?
○買い物をする時に、何を見ているのか?何が影響を与えているのか?
○買い物モードの中、何が気持ちの“スイッチ”を入れているのか?
○何故、それを選ばないのか?(この理由こそが一番知りたいところです。)
○買い物をした後、商品を利用した後、買い物客の気持ちには何が残るのか?

 

買い物をする人の、行動の前後関係を見て行き、「そもそも」を繰り返していくと色々な局面が捉えられます。
この段階では、調査(アンケートなどの分析)に入る前に、まずは「自分の頭で繰り返し考えて見る事が大事」と思い
ます。「そもそも」を呪文のようにして全てのコトを万遍なく追求するのではなく、どこが一番有効な箇所かにポイントを見つけて行きます。
(このポイントの見つけ方の差が、マーケティングやプランニングのスキルの差だと感じます)

 

自分の専門分野ではないと言う思いが課題解決の為に超えようとする壁を自らが高くしてしまうことがあります。
その時に、今回の言葉を思い出したいと思います。

 

型があるから型破り。型がなければ、それは形無し。

 

「型」はあって良い、でも、この「型」を超えなければ新しいチャンスは来ないことを感じています。

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追記:
「型」を英語で表すと
以前、アメリカに住む知人に「型」を英語で言うと何か?そんな質問を投げかけたことがあります。
Type Model 少し考えてからIdentity などの単語を挙げてくれました。
型を破る 英語だとflout the conventions
型は何かに置き換えると「らしさ」や「その企業や人の持つこだわりと言ったもの」この言葉の方がしっくり当てはまり、発想や行動を前へと進めやすいと思います。