小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第18回は「心が躍る」です。教科書の表記は、「心がおどる」となっています。
心が躍る
「心が躍る」の読み方
こころがおどる
「心が躍る」の意味
喜びや新たなことへの期待によって、胸がわくわくする。(学研慣用句辞典)
「心が躍る」の使い方
「包みを開ける瞬間、期待に心が躍る」
「心が躍る」の語源・由来
「心が躍る」に使われている「躍る」の語源は「をどる」です。
「をどる」とは、「飛び跳ねる、跳ね上がる」という意味をもつラ行四段活用の動詞です。
『枕草子』に出てきます。
枕草子 にくきもの
「蚤(のみ)もいと憎し。衣(きぬ)の下にをどりありきてもたぐるやうにする」
[訳] 蚤もとてもしゃくにさわる。着物の下で飛び跳ねまわって、(着物を)持ち上げるようにする(のが)。枕草子 うつくしきもの
「うつくしきもの。瓜にかぎたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来る。」
[訳]:かわいらしいもの。瓜にかいてある幼い子どもの顔。すずめの子が、(人が)ねずみの鳴きまねをすると飛び跳ねてやって来る(様子)。
「心が躍る」は、心が飛び跳ねるようなさまを言い表した語です。
ついでに、「躍る」と「踊る」の使い分けについて。
「躍る」と「踊る」の語源は、ともに「をどる」です。
NHK放送文化研究所
「踊る」と「躍る」の使い分け
文化庁の『言葉に関する問答集(総集編)』に、「躍る」と「踊る」の使い分けについての解説があります。それによると、「躍」は、「勢いよく飛びあがること」を意味します。「小躍りして喜ぶ」「馬が躍り上がる」「魚が躍る」「身を躍らせて飛び込む」のように「はねあがる」意味に使われます。また、「胸が躍る」「心臓が躍る」のように、「喜び・驚き・期待・緊張などで、胸がわくわくする・どきどきする、どうきが激しくなる場合などの動き」についても用いられます。一方、「踊」は、「ある決まりに従っておどるおどり」を表します。「舞踊」のように、音楽や歌に合わせて手足や身体を動かし、身振りや手振りをしながらリズムに合わせて動作をする「おどり」についてこの字が使われます。(「ダンスを踊る」「踊り子」「盆踊り」「踊りの名取りになる」)また、人に操られて行動することにも用いられます。(「スパイとして踊らされる」)(略)
ちなみに、漢字の「躍」は、「足」と「翟」からなる形声文字です。「翟」は鳥の「きじ」を意味し、「キジのように高く速くおどる意味」を表します。一方、「踊」は、「足」と「甬」からなります。「甬」は「用」と同じで「持ち上げる」を意味し、「足を持ち上げておどる意味」を表します。(『新版漢字林第2版』)漢字の成り立ちを考えると使い分けがより理解できます。
メディア研究部・放送用語 滝島雅子
「心が躍る」の蘊蓄
「心が躍る」「心が弾む」「胸が躍る」「胸が弾む」
心が躍る
喜びや新たなことへの期待によって、胸がわくわくする。
心が弾む
楽しかったり期待することがあったりして、気持ちがうきうきする。
胸が躍る
期待・興奮などで浮き浮きして落ち着かなくなる。胸がどきどきする。胸がわくわくする。(精選版 日本国語大辞典)
胸が弾む
うれしいことがあって、気持ちが浮き浮きする。(慣用句の辞典)
「心が躍る」と「胸が躍る」は「胸がわくわくする」という共通点があります。
「心が弾む」は「胸が弾む」は「気持ちがうきうきする」という共通点があります。
「心」と「胸」は同義、おそらく心臓あたりを指したのでしょう。
「躍る」=「わくわく」と「弾む」=「うきうき」の違い
「小学館 類語例解辞典」から引いたものを整理して紹介します。
「浮き浮き」は、よいことを体験、または目前にして、気持ちが楽しくなっている様子。
「わくわく」は、実現して欲しいことの実現直前の気持ちの落ち着かないさまをいう。
用例 | 浮き浮き | わくわく |
朝から…している | ○ | ○ |
心が…する | ○ | ○ |
宝を見つけて…する | △ | ○ |
…と出かける | △ | - |