教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その69) 慣用句「骨が折れる」

小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第27回は「骨が折れる」です。教科書の表記は、「ほねがおれる」となっています。

  

骨が折れる

 

「骨が折れる」の読み方

ほねがおれる 

 

「骨が折れる」の意味

苦労である。面倒である。(広辞苑

 

「骨が折れる」の使い方

内容を理解するのに骨が折れる。 

 

「骨が折れる」の語源・由来

「骨が折れる」の語源は、言葉どおりの骨折にあります。

実際に骨が折れるには、かなりの負荷がかけられなければなりません。同様に精神的・肉体的にかなりの負荷がかかる様子を「骨が折れる」と表現したものです。

 

「骨が折れる」の蘊蓄

「骨が折れる」と「骨を折る」

まず、「折れる」と「折る」を検討します。

「折れる」は自動詞であり、「折る」は他動詞です。

「折る」というのは、「長いものを曲げて折れた状態にする」ことです。この「棒状の細長いものが真っ二つに破損した時の表現」が、「折れる」であり「折る」です。

語感としては、他動詞の「折る」には能動的な関与がある分だけポジティブです。

さらに、「折れる」には、「挫折する」という意味もあります。「心が折れる」などのように使います。「心を折る」とは普通は言いません。

 

それでは、「骨が折れる」と「骨を折る」の検討に移ります。

 

「骨が折れる」

苦労である。面倒である。(広辞苑

「骨を折る」

精出して働く。物事をなしとげるために苦労する。(広辞苑

広辞苑の意味の違いは、動詞の語感の違いをそのまま反映しています。

ともに「苦労である」ことは共通しています。

「骨が折れる」は、「苦労である」という状態を言っているに過ぎません。

一方、「骨を折る」には、「苦労である」が事を為すという営みがあります。決して悲観してはいませんし、「心が折れる」こともありません。

「粉骨砕身」は、「骨を折る」の類義語でありますが、「骨が折れる」の類義語ではありません。