教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

退職後を生きる(その4) 年金生活のいま② 

年金生活のいま②

 

所得代替率61.7%

所得代替率」というのは、公的年金の受取額がどの程度の水準にあるかを示す指標です。

年金生活の現状をする上で、さらには年金のこれからを考える上でも、カギになる言葉であり数字です。詳しく解説します。

 

所得代替率」とは、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合か、を示すものです。2019年時点の数値が61.7%です。

 

ここで言う「現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)」の平均は、厳密には「現役世代男性の手取り収入額(ボーナス込み)」の平均を指します。就労女性の収入は含まれていません。

 

2019年時点の「現役世代男性の手取り収入額(ボーナス込み)」の平均は、月額35.7万円でした。

この数値の61.7%にあたる22万円が、「標準世帯」の年金受け取り月額ということになります。

 

「標準世帯」というのは、40年間就労した(つまり厚生年金に加入していた)夫と専業主婦(国民年金のみ)の妻というモデル世帯のことを言います。

このモデル自体、先ごろ10万円給付の折に問題になったように50年も前のものです。夫婦共働きがごく普通になった現在とはズレがありますが、そのことは今は置いておきます。

 

「標準世帯」の夫婦が受け取る年金の内訳は次のようになります。

夫の厚生年金(平均)   90,000円

夫の基礎年金(国民年金) 65,000円

妻の基礎年金(国民年金) 65,000円  合計22万円

 

厚生年金は就労時の収入で決まってきますので、千差万別です。

国民年金は一様に同額ですが、20歳を過ぎた学生の国民年金への加入義務化された1989年以前に学生であった私などは、未加入(未納付)期間分減額されています。

 

さて、「標準世帯」の年金月額22万円は、総務省の家計調査による高齢者世帯の標準的な生活費である1カ月25万円よりも3万円少ない額です。

公的年金の現状は、標準的な高齢者世帯の標準的な生活を満たしていないのです。平たく言えば、年金だけでは生活できないということです。

 

所得代替率」61.7%の内訳数字を使って、標準以外の2つの世帯を示してみます。

夫婦共稼ぎ世帯(夫婦同収入と仮定)

夫の厚生年金(平均)   90,000円

夫の基礎年金(国民年金) 65,000円

妻の厚生年金(平均)   90,000円

妻の基礎年金(国民年金) 65,000円  合計31万円

31万円は、所得代替率でいうと86.8%です。

私の場合はこれに該当します。生活が苦しいわけではありませんが、ゆとりがあるわけでもありません。よく考えると、現役時代は妻の収入もあったわけで、それを仮に男子の手取りと同額とすると夫婦で70万円あったことになります。この場合の所得代替率は44.2%です。収入が半分以下になるわけですから、暮らしぶりを変えないとゆとりがないという「気分」は解決しません。

 

自営業や農業・漁業世帯(夫婦ともに国民年金

夫の基礎年金(国民年金) 65,000円

妻の基礎年金(国民年金) 65,000円  合計13万円

13万円は、所得代替率でいうと36.4%です。

現役時代に貯蓄や資産運用をしっかりやっておかないと、老後の生活を維持することが極めて困難になります。

 

年金生活のいまは、およそこんな感じです。

 

次の回では、現役世代の方たちの「老後」である「年金のこれから」を考えます。