教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

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教員の「心の病」が深刻だ

2021年度に「心の病」で1カ月以上休んだ公立学校の教員について、文部科学省が調査結果を発表しました。

 

新聞報道を紹介します。

 

心の病で休職の公立校教員、最多5897人 若い世代ほど高い割合
朝日新聞デジタル
12/26(月) 17:00配信


 昨年度に「心の病」で休職した公立の小中高校などの教職員は前年度比694人増の5897人で、過去最多を更新したことが26日、文部科学省の調査でわかった。5千人を上回るのは5年連続。1カ月以上病気休暇を取っている人を合わせると1万944人に上り、初めて1万人を超えた。教員の多忙さの抜本的な改善が進まないなか、若手ほど心の病による休職者・休暇取得者の比率が高い実態も浮かんだ。

【グラフ】20代の休職者は50代の2倍超。年代別で大きな差がある休職者の割合と、直近10年の休職した教職員数の推移

 都道府県や政令指定市教育委員会を対象に調べた。精神疾患による休職者と、1カ月以上病気休暇を取った人を合わせた数は、前年度から1448人増えて1万944人。うち20代は2794人で、この年代の在職者に占める割合は1・87%と年代別で最多だった。30代は2859人で1・36%、40代は2437人で1・27%。50代以上(2854人、0・92%)と比べると、若い世代で目立つ。

 文科省の担当者は「業務量が一部に偏ったり、コロナ禍で教職員間のコミュニケーションが取りづらくなったりしている」と指摘。また、若手の相談相手になってきた40代の中堅が、採用数が少なかったため層が薄く、悩みを抱える20~30代を支えるのが難しくなっている、と説明する。「管理職が目配りしたり、教職員がストレスチェックなどにより自身で心身の状況を把握したりする取り組みを促したい」と話す。

 

 

 

心の病で休職の公立校教員が過去最多 背景に長時間労働など
毎日新聞
12/26(月) 18:15配信


 2021年度に「心の病」で1カ月以上休んだ公立学校の教員が前年度比15・2%増の1万944人となり、初めて1万人を超えたことが26日、文部科学省の人事行政状況調査で明らかになった。全教員に占める割合も1・19%で過去最高だった。文科省は慢性化する学校現場の長時間労働や、若手教員への負担が増加の背景にあるとみている。

 調査対象は、全国の公立小中学校、高校、特別支援学校などの全教員約91万9900人。「うつ病」など精神疾患が原因で1カ月以上の長期療養をした教員は、前年度より1448人増えた。16年度に「1カ月以上の長期療養者」を調べ始めてから増加傾向にある。

 1万944人のうち、「病気休暇」を取れる上限の原則90日を超え、休職したのは5897人(前年度比694人増)で過去最多を記録。全教員に占める割合も0・64%と最も高かった。07年度以降、精神疾患の休職者は5000人前後で高止まりを続けていた。

 文科省が16年度に実施した調査では、公立小学校で約3割、公立中学校で約6割の教員が「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業をしていた。長時間労働の是正は途上にあり、同省は、一部の教員に業務の負担が集中し、「心の病」による休職などにつながった可能性があるとする。

 調査では、参考値として精神疾患で病気休暇を取ったり、休職したりした教員の年代ごとの割合を示しており、20代が1・87%、30代が1・36%、40代が1・27%、50代以上が0・92%で、若いほど高くなっている。全年代で前年度より増加しており、20代の増え幅は0・43ポイントで最も大きい。

 学校では、第2次ベビーブームの影響で1980年代に大量採用された公立校教員が大量退職の時期を迎えている。一方、00年前後に少子化の進行を見据えて採用数を抑えたため、若い世代の教員を指導する30代半ばから40代半ばの中堅教員が不足している。

 文科省は「特に20~30代で休職者が増える傾向が強い。中堅教員が少ない自治体が多いために若手が気軽に相談できる相手が少なく、学校内で若手へのサポートも薄いことが考えられる。働き方改革を進めて教員の負担を減らし、相談しやすい環境を整備したい」としている。【深津誠】

 

「心の病」休職の教員、約2割が退職に 多忙で産業医面談拒否も
毎日新聞
12/26(月) 18:18配信


 2021年度に「心の病」で1カ月以上休んだ公立学校の教員は、前年度比15・2%増の1万944人と初めて1万人を超えた。文科省は、「心の病」が原因で休職した公立校教員5897人が、22年4月時点で職場復帰したかどうかも調べた。41・9%(2473人)が復職した一方で、引き続き休職している教員は38・7%(2283人)、19・3%(1141人)が退職に至っていた。

【「心の病」休んだ教員の人数 右肩上がり】

 「職場に復帰しても、再び精神疾患になって休職を繰り返し、最終的に退職するケースが少なくない」

 ある政令教育委員会の人事担当者は打ち明ける。この市では、復帰後2年間は学期ごとに教委の担当者らが学校を訪ね、個々の状況を把握している。ただ、ここ数年で休職者は約1・7倍に増え、理由も「仕事」「家庭事情」「保護者対応」など多岐にわたるという。

 この担当者は「突き詰めると、教員が足りないことが原因ではないか」とみる。学校では、年度初めに教員が定数を満たすよう配置されても、年度途中に産休や育休などで教員が欠けると補充が難しい。1人あたりの業務量が増加し、心に不調を覚えても、言い出せずに悪化することもある。

 また、学校ごとに教員の定数は決まっており、復職後は「即戦力で仕事をしなければならず、簡単な仕事からというわけにもいかない。子どもや保護者とのコミュニケーションに悩む教員も多い」と打ち明ける。

 教育現場を支援するNPO法人「共育の杜」(広島市)と東京大の小川正人名誉教授(教育行政学)らは11~12月、約80の教委に精神疾患の教員への対応を調査。「復帰後、すぐに担任を受け持たねばならない」「忙しくて、産業医との面談を拒否するケースもある」など業務の多忙さと、管理職らのフォローが十分でないことがわかったという。

 共育の杜の藤川伸治理事長は「産業医が社員と頻繁に面談し、精神疾患が再発する予兆をつかみ、再び休職する割合を大きく減らした企業もある。復職前後のきめ細かいフォロー体制を作る必要がある」と指摘する。文科省は来年度、教員の精神疾患による休職の原因を詳しく分析し、教員が悩みを相談しやすい体制づくりの研究も進めるとしている。【深津誠】

 

まず、事実を正確に把握する必要があります。

 

心の病で休職の公立校教員、最多5897人

マスコミの報道では、休職者の多さが前面に出ています。

それはとても大きな問題なのですが、「休職」というのは「「病気休暇」を取れる上限の原則90日を超え」て休んでいるものを指します。その数が5897人で、「全教員に占める割合も0・64%」に達しているというわけです。

他の産業を含め、厚生労働省が「労働安全衛生調査(実態調査)」で公表しているのは1カ月以上の休業者数です。

平成27年度の資料を紹介します。

全産業における1カ月以上の休業者の占める割合は0.4%です。これ自体も問題ですが、ここでは「ものさし」として示します。

さて、「2021年度に「心の病」で1カ月以上休んだ公立学校の教員が前年度比15・2%増の1万944人」です。これは「全教員に占める割合も1・19%」で過去最高だったというのです。

全産業の0.4%に比して教員の1.19%は約3倍。学校という「事業所規模」からすれば4~6倍の多さです。突出した異常です。

 

文科省の担当者は……「管理職が目配りしたり、教職員がストレスチェックなどにより自身で心身の状況を把握したりする取り組みを促したい」と話す。(朝日新聞

文科省は「特に20~30代で休職者が増える傾向が強い。中堅教員が少ない自治体が多いために若手が気軽に相談できる相手が少なく、学校内で若手へのサポートも薄いことが考えられる。働き方改革を進めて教員の負担を減らし、相談しやすい環境を整備したい」としている。(毎日新聞

 

20代の1.87%(全産業の4.7倍)は大問題だけれど、50代以上の0.92%(全産業の3.1倍)だって大問題です。「学校内で若手へのサポートも薄い」ことが問題で、「管理職が目配り」して何とかしようという文科省の問題意識が最大の問題です。

これはもはや「文部科学省教育委員会-学校現場」という単線ルートだけでは解決できるとは考えられません。学校というもののあり方や教員に求めるものなど、社会全体で考えて合意形成しなければならないことが根っこにあるのではないでしょうか。(別の機会に言及したいと思います)