10月13日、文部科学省が2020年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を公表しました。
14日の新聞には、「不登校最多」の文字が躍りました。
不登校増加について文科省は一斉休校や分散登校などにより「生活リズムが乱れやすく、学校行事なども制限され登校意欲がわかなかったのでは」と指摘。(朝日新聞)
私は、文科省の統計表から3つのグラフを作成しました。
【グラフ1】小学校 不登校児童数の推移
【グラフ2】小学校 不登校児童の割合の推移
【グラフ3】小学校 不登校の要因(2020年度)
2020年度の不登校児童は63350人で、2019年度から実人数で10000人増えています。この増加分については文科省の指摘するコロナ禍の影響も考えられます。不登校の要因の60.3%が「無気力、不安、生活リズムの乱れ等」です。
しかし、コロナ禍はたまたまのことで、たとえコロナ禍がなかったとしても「不登校最多」を記録したのではないかと、私はグラフを見ながら考えています。
2019年度の不登校児童は53350人で、2018年度から実人数で8509人増えています。コロナ禍の前年も、大差なく増加しているのです。そして2019年度の不登校要因も、「無気力、不安、生活リズムの乱れ等」が51.3%でした。2020年度を特別視するほどの差異はなさそうです。
少し長いスパンで見てみましょう。
【グラフ1】は、1991年度から2020年度までの30年間の不登校児童数の推移を示しています。概ね増加傾向が続いており、2020年度は1991年度の5.01倍になっています。
児童数は年々減少していますから、より客観的に推移をとらえようとしたのが【グラフ2】です。
青色の棒グラフは、不登校児童の割合を表しています。グラフの山のでき方としては【グラフ1】とほとんど同じです。しかし、倍率では2020年度は1991年度の7.14倍になっています。
いずれにしても、この30年間、不登校児童は人数・率ともに増加しています。「社会の変化」という言葉でくくられる諸々がその主因なのでしょうが、じゃあ具体的にはどうすればいいのでしょう。
注目したいのは、【グラフ2】の赤色の折れ線グラフです。
これは、1991年度を基点として不登校児童の割合が前年度と比較してどれほど増減したかという割合を示しています。文科省のデータは人数ベースの増減率ですが、割合ベースの増減率に加工しました。
これを見ると、1991年度から1998年度までは不登校児童の割合は増加基調にあります。
それが1999年度に下降したのをきっかけに、2012年度までは下降・横ばいが続きます。
そして2013年度を境に大上昇傾向が続いています。
不登校の要因というのは複合的であり、当人にも分からないことが多いものです。【グラフ3】に「無気力・不安」とありますが、これが要因の半分近くを占めます。この「無気力・不安」の多くは当人がそう分析したのではなく、端(はた)から見ていて総合的に何となくそう思えるということだと思います。
ましてや「学業」が要因になっているものはごくわずかですから、学校教育との関係を云々するのは的外れかもしれません。
それでも興味深いある一致が見られます。
1998学習指導要領で「総合的な学習の時間」が登場します。1998年に改訂され、2000年度から試行が始まり、2002年度に完全実施されています。教育基本法の改正を受けて改訂された指導要領が施行される2011年度までの間、曲がりなりにも「総合」が生きていた時期です。その時期と、不登校が下降・横ばいであった時期がほぼ重なります。
不登校児童の割合は、2012年度以降上昇基調です。
「道徳科」や「英語」が導入され、授業時数が増え、教科書が厚くなる時期と重なります。
それにしてもここ数年の増加率は異常です。
2018年度に前年比16%と、初めて2桁の上昇を記録しました。19年度は13%、そしてコロナ禍の20年度が17%です。
2020年度から現行学習指導要領が実施されていますが、試行が始まったのが18年度です。いや~な感じの一致です。
ブラック職場と報道され、教師の働き方がクローズアップされるようになった時期とも重なります。
すべては偶然の一致かもしれません。おそらくそうでしょう。
しかし、これら偶然の重なりが、不登校にはなっていない子らも含めて多くの子に重い荷物を背負わせることになっているということはないでしょうか。
不登校の問題を「個」の問題に終わらせず、学校のあり方や教育のあり方を、もっと言えば社会のあり方を問い直す糸口にしたいものです。