教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

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「不登校特例校」が示すもの①

2023年1月31日、文部科学省は過去最多となった不登校の対策方針を示しました。「有識者会議の意見を踏まえ、年度内にもとりまとめる」としています。

 

 

GIGA端末で不登校の兆候把握へ 相談希望や「アラート」導入
毎日新聞 1/31(火) 19:27配信


 文部科学省は31日、小中学生で過去最多となった不登校の対策として、国の「GIGAスクール構想」で子どもに1人1台配布されたデジタル端末を活用し、不登校の兆候をつかむ方針を明らかにした。日常的に心身の状況を入力してもらい、学校がデータを踏まえて不登校リスクの高い子どもを把握・支援する。有識者会議の意見を踏まえ、年度内にもとりまとめる新たな不登校対策に、端末の活用を盛り込むとしている。

 これまでの対策は、子どもの事情に応じ特別カリキュラムを組める「不登校特例校」の設置を進めるなど、不登校になった子どもへの支援が中心だった。ただ、文科省の調査では、2021年度の小中学生の不登校は前年度比24・9%増の24万4940人と過去最多を更新。同省はこうした状況を受け、不登校の予防にも力を入れることにした。

 文科省は22年度、委託事業として、大阪府吹田市内の小中学校5校で子どもが学校配布の端末を利用し、心身の健康状態を担任の教員やスクールカウンセラーに伝える取り組みを進めている。「頭が痛い」などの体調の異変や睡眠状況、教員への相談希望の有無などを毎日入力し、教員に「アラート」も送れる。

 文科省は、同様の仕組みを全国的に広げることを想定しており、「リスクがある子どもの把握は教員の経験に頼ってきたが、データに基づき、課題が顕在化する前に予防できるようにしたい」と説明している。

 不登校の要因は、生活リズムの乱れや人間関係の悩みなど多岐にわたり、学業面のストレスもその一つとされる。新たな不登校対策では、読み書きが困難などの課題がある子どもにも分かりやすいよう授業を改善することも検討。10都道府県の計21校にとどまる不登校特例校の拡大についても引き続き進める方針だ。 

 永岡桂子文科相は31日の閣議後記者会見で「多くの子どもが学校の学びから置き去りにされていることは教育の根幹を揺るがす憂慮すべき課題だ。実効性ある対策をとりまとめたい」と述べた。【深津誠】

 

そもそも、「不登校」とは…

次の法律に「不登校」の定義があります。

義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律平成28年法律第105号)

第一章  総則

(目的)
第一条  この法律は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  学校  学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。
二  児童生徒  学校教育法第十八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいう。
三  不登校児童生徒  相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。
四  教育機会の確保等  不登校児童生徒に対する教育の機会の確保、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保及び当該教育を十分に受けていない者に対する支援をいう。

 

相当の期間学校を欠席する児童生徒」とは、具体域には「年間30日以上欠席した者」を指します。

不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。

     (文部科学省不登校の現状に関する認識」)

 

先の「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(略称「教育機会確保法」)には、「不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等」として次のように定めています。

第三章  不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等

(学校における取組への支援)
第八条  国及び地方公共団体は、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、児童生徒と学校の教職員との信頼関係及び児童生徒相互の良好な関係の構築を図るための取組、児童生徒の置かれている環境その他の事情及びその意思を把握するための取組、学校生活上の困難を有する個々の児童生徒の状況に応じた支援その他の学校における取組を支援するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(支援の状況等に係る情報の共有の促進等)
第九条  国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対する適切な支援が組織的かつ継続的に行われることとなるよう、不登校児童生徒の状況及び不登校児童生徒に対する支援の状況に係る情報を学校の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者間で共有することを促進するために必要な措置その他の措置を講ずるものとする。

(特別の教育課程に基づく教育を行う学校の整備等)
第十条  国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対しその実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の整備及び当該教育を行う学校における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(学習支援を行う教育施設の整備等)
第十一条  国及び地方公共団体は、不登校児童生徒の学習活動に対する支援を行う公立の教育施設の整備及び当該支援を行う公立の教育施設における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(学校以外の場における学習活動の状況等の継続的な把握)
第十二条  国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う学習活動の状況、不登校児童生徒の心身の状況その他の不登校児童生徒の状況を継続的に把握するために必要な措置を講ずるものとする。

(学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援)
十三条  国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。)に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。

 

特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校」は正式には「不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校」といい、その通称が「不登校特例校」です。

 

不登校特例校」は、構造改革特区での規制緩和の一環として2004(平成16)年に東京都八王子市の高尾山(たかおさん)学園に初めて導入され、2005年に学校教育法施行規則改正で制度化されました。

そして、2016年の「教育機会確保法」によって国および地方自治体の努力義務となりました。

とはいえ、「不登校特例校」の設置は2022年4月時点で21校(公立学校12校、私立学校9校)にとどまっています。このたびの報道によれば、「10都道府県の計21校にとどまる不登校特例校の拡大についても引き続き進める方針」だということです。

 

 

不登校特例校」には20年近い歴史があるとは言え、一般に広く認知されている存在ではありません。

次回、「不登校特例校」の内実とそれが示す課題について掘り下げたいと思います。