6年「時計の時間と心の時間」(光村図書)②
3「時計の時間と心の時間」を読む。
・P54下段「話し合いの例」を参考に,筆者の主張と複数の事例との関係に着目して,論の進め方の意図について話し合う。
第4時の授業です。
「話し合いの例」には、2つの吹き出しが書かれています。
「筆者は、『時計の時間』ではなく、『心の時間』についてだけ事例を挙げているね。これはきっと--。」
「筆者は、--ということを読み手に伝えたいのだから、--。」
「時計の時間」というのは、まさに空気のごとく、私たちの生活の中に当たり前にあるものです。筆者は一般概念としては使われていない「心の時間」の重要性を説こうとしています。したがって、「心の時間」についての理解を深めてもらえる事例を挙げながら論を進めていきます。
第4時では「論の進め方の意図について話し合う」ことになっていますが、まずは〈中〉の段落の読みです。
〈中〉
〈中〉段落のまとまりを1つの説明文として見なすこともできます。②段落は「話題提示」をしています。
②段落
(要点)「心の時間」には、さまざまな事がらのえいきょうを受けて進み方が変わったり、人によって感覚がちがったりする特徴がある。
②段落の「話題提示」を受ける形で、③~⑥段落に「特徴」の具体的な事例を挙げています。
③段落
(要点)その人がそのときに行っていることをどう感じているかによって、「心の時間」の進み方が変わる。
④段落
(要点)一日の時間帯によっても、「心の時間」の進み方は変わる。
⑤段落
(要点)身の回りの環境によっても、「心の時間」の進み方は変わる。
⑥段落
(要点)「心の時間」には、人によって感覚が異なるという特性がある。
〈中〉段落の「まとめ」になります。それをもって文章全体の「まとめ」である⑧段落につないでいます。
⑦段落
(要点)「心の時間」のちがいをこえて、私たちが社会に関わることを可能にし、社会を成り立たせているのが、「時計の時間」である。
さて、話し合い。
話し合いには、基本的に「正解」もなければ「間違い」もありません。なぜなら、発言内容は話者の受け止めだからです。混沌の中から吟味されて、「筆者の意図」と思しきものに収束されていけばいいのです。
決して、教師の思う「正解」を言い当てるクイズであってはなりません。
とは言え、指導者としては収束した「解」を持っていなくてはなりません。そこで登場するのが、先ほどの「吹き出し」です。
「筆者は、『時計の時間』ではなく、『心の時間』についてだけ事例を挙げているね。これはきっと--(A)。」
「筆者は、--(B)ということを読み手に伝えたいのだから、--(C)。」
吹き出しの省略部分(A)(B)(C)に、あなたはどんな会話を入れますか?
(A)
この部分は、この稿の初めの方に書いたことと関係しているようです。
「時計の時間」というのは、まさに空気のごとく、私たちの生活の中に当たり前にあるものです。筆者は一般概念としては使われていない「心の時間」の重要性を説こうとしています。したがって、「心の時間」についての理解を深めてもらえる事例を挙げながら論を進めていきます。
(B)
この部分は、文章の「要旨」を指しているようです。
(要旨)私たちは「時計の時間」と「心の時間」という性質のちがう時間と共に生きている。私たちに必要なのは、「心の時間」を頭に入れて、「時計の時間」を道具として使うという、「時間」と付き合うちえなのである。
(C)
この部分は、論理展開を指しているようです。
「心の時間」と「時計の時間」という2つの時間の特徴・特性を示し、そのうえで自らの主張につないでいます。
もっともこの「吹き出し」だって筆者の意図そのものではなく、教科書編集者の読解に過ぎません。筆者に見せれば100点(絶対的正解)であるとは限りません。あるいは120点かもしれないし、もしかしたら80点かもしれません(不合格点はないでしょうが)。それくらいの気持ちで付き合えばいいと、私は思います。