6年「笑うから楽しい」(光村図書)
「笑うから楽しい」は、「筆者の主張や意図をとらえ,自分の考えを発表しよう」という単元を構成する2つの教材の1つで、「練習教材」の位置づけです。
学習指導要領で本単元の位置を確認します。
〔知識及び技能〕
(2)ア 原因と結果など情報と情報との関係について理解することができる。
〔思考力,判断力,表現力等〕
C⑴ア 事実と感想,意見などとの関係を叙述を基に押さえ,文章全体の構成を捉えて要旨を把握することができる。
C(1)ウ 目的に応じて,文章と図表などを結び付けるなどして必要な情報を見つけたり,論の進め方について考えたりすることができる。
C(1)オ 文章を読んで理解したことに基づいて,自分の考えをまとめることができる。
光村図書のHPにある資料より、単元の指導例を引用します。
「事実と感想,意見などとの関係」「要旨」が、ここでの重点指導内容です。
練習教材「笑うから楽しい」の読みに与えられた時間は、第2時の1時間です。
2「笑うから楽しい」を,語句の意味を確かめながら読む。
・筆者の考えを捉え,事例を挙げることの効果とその有効性について考える。
・この文章に対する自分の考えをまとめる。
・筆者の考えを捉え,事例を挙げることの効果とその有効性について考える。
教材文には段落番号と三段構成を示す色帯が付されています。
〈初め〉
①私たちの体の動きと心の動きは、密接に関係している。
〈中〉
②私たちの脳は、体の動きを読み取って、それに合わせた心の動きを呼び起こす。
③表情によって呼吸が変化し、脳内の血液温度が変わることも、私達の心の動きを決める大切な要素の一つである。
〈終わり〉
④私たちの体と心は、それぞれ別々のものではなく、深く関わり合っている。
文章構成は「両括型」で、〈初め〉と〈終わり〉に筆者の考えが述べられています。それぞれの段落は「頭括型」で、1文目に段落の中心文(要点)があります。
そして、中心文のあとに「事例」がきます。抽象的な論旨を事例によって咀嚼して理解してもらおうという「効果とその有効性」があります。
何げなく読んでいると素通りしてしまいそうですが、題名が変です。
「笑うから楽しい」
逆でしょ。生活者の感覚としては、「楽しいから笑う」のです。
この真逆のタイトルにこそ、筆者の真意が凝縮されているようです。本文を読んでから改めて見ると、あきれるほどによくできたタイトルです。
①私たちの体の動きと心の動きは、密接に関係している。
(事例)悲しいときに泣く、楽しいときに笑う
↓
心の動きが体の動きに表れる
泣くと悲しくなったり、笑うと楽しくなったりする
↑
体を動かすことで、心を動かす
②私たちの脳は、体の動きを読み取って、それに合わせた心の動きを呼び起こす。
(事例)口を横に開いて、歯が見える表情の実験 → ゆかいな気持ちに
↓
脳は表情から笑っていると判断し、楽しい気持ちを起こした
③表情によって呼吸が変化し、脳内の血液温度が変わることも、私達の心の動きを決める大切な要素の一つである。
・人は、脳を流れる血液の温度が低ければ、ここちよく感じる。
(事例)笑ったときの表情は、鼻の入り口が広くなるので、多くの空気を取り込む
↓
脳を流れる血液が冷やされて、楽しい気持ちが生じる
④私たちの体と心は、それぞれ別々のものではなく、深く関わり合っている。
(事例)楽しいという心の動き → えがおという体の動きに表れる
体の動き → 心に働きかける ※ここでは具体例は省かれている
つまり、「私たちの体の動きと心の動きは、密接に関係している」という論旨を、「体の動き」=「笑う」、「心の動き」=「楽しい」に置き換えて具体化しているわけです。事例がなければとうてい理解できない内容です。