教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

説明文を読む(27)3年「ありの行列」②

3年「ありの行列」(光村図書)

 

2 論理の展開に着目して,教材文を読む。

・文章を「初め」「中」「終わり」に分け,「問い」「答え」がどの段落にどのように書かれているかを探す。

・P102下段「つながりを考えるとき」を参考に,接続語や指示語を手がかりとして,「問い」から「答え」までの論の進め方を確かめる。

ウイルソンの研究の進め方,ありが行列を作る仕組みについて,書かれていることを要約する。

・文末などに着目して,「調べたこと」と「考えたこと」を読み分ける。

 

前回は、「・文章を「初め」「中」「終わり」に分け,「問い」「答え」がどの段落にどのように書かれているかを探す。」に該当する部分の授業記録を紹介しました。

yosh-k.hatenablog.com

 

今回はその続編です。

・P102下段「つながりを考えるとき」を参考に,接続語や指示語を手がかりとして,「問い」から「答え」までの論の進め方を確かめる。

・文末などに着目して,「調べたこと」と「考えたこと」を読み分ける。

これに該当するのが、「本論(なか)」の読み部分の授業記録です。

 

(2)第2時-本論の読みⅠ

 

③段落では、事実と意見の関係をとらえる読み方を指導します。子どもには、「3種類の文に分かれて読もう」という課題を示しました。

 

文を意識させるため、③段落は次のようなプリントをしました。言葉が途中で切れないように改行(補1)しているのも、本読みが苦手な子へのてだてです。

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(補1) いつもいつもそうする必要はありませんが、改行時に読みが詰まる子がいる場合は、一度試してみるといいです。ちょっとした工夫でハードルが低くなることがあります。

 

3人グループを作り、❶「調べる方法」の文❷「調べた結果」の文❸「分かったこと、考えたこと」の文に分かれて役割音読するように指示しました。

当然のことながら、子どもの読みは各グループでバラバラになりまし。バラバラになることで、「どの文がどの種類の文なのか?」という問いを引き出そうという仕掛けです。

 

「問い」が共有されたら、解決のための仕掛けに移ります。今回は劇化を取り入れます。劇化により、読みの苦手な子が視覚的に理解します。(補2)

(補2)  劇化(簡単な動作化を含めて)は、授業を視覚化(ビジュアルに)するための代表的な手法です。他にもペープサート、挿絵や写真の活用、キーワードやキーセンテンスのカードの活用などの視覚情報によって理解を進めるのです。私のわずかな経験からでも、特別な支援が必要な子に限らず全ての子に有効です。授業が活性化します。


まず、どんな役が必要か尋ねました。「ウィルソン」「はじめのあり」「たくさんのあり」「読む人」が出され、役割を決めました。砂糖の山と巣の場所を設定し、ちょっとした劇が始まります。子どもたちは、もうそれだけで楽しくて仕方ないのです。


読み手が1文読み、それに関係する役者が動きます。動きの後、「今の動きで良かったか?」「もっといい動きにするには?」「この文には動きがあったかな?」と話し合い、次の1文にすすんでいきます。

 

劇のあと、3種類の文は劇のどんなところに注目して区別すればいいのか、ペアで話し合い、全体で話し合いました。(補3) そして、
○「方法」の文--ウィルソンの動き
○「結果」の文--ありの動き
○「分かったこと」の文--動きがない
と分けられることを確認しました。

  (補3)  「指導の工夫」と「個別の配慮」について触れておきます。ペアで話し合い、全体で話し合うという手順は、全ての子どもが学習活動に参加するための、あるいは発言しにくい子が言えるようにするための「指導の工夫」です。そうすることで大半の子どもの学習は進みますが、中には話し合いがうまく進まないペアもあります。そうした子どもたちに声を掛け、話し合いをリードしてやるのが「個別の配慮」です。
特に算数などでは、授業時間だけではカバーしきれず、事前や事後の指導を行う「特化した配慮」が必要になることもあります。

 

3人グループに戻り、教材文に「方法-青」「結果-赤」「分かったこと-黒」のサイドラインを引かせました。(補4)

そして再度、文の種類を考えながら役割音読を行いました。今度はバッチリです。

(補4)子どもの読みは各グループで子どもの読みは各グループで とても些細なことですが、サイドラインの色を使い分けるだけで授業が「見える化」し、子どもの理解がぐんと進みます。指導の工夫というのは、こうした小さな積み重ねなのです。

 

授業のまとめでは、動きのある文は「ました」(過去形)で書かれていて「事実」の部分、動きのない文は「です」(現在形)で書かれていて「意見」の部分である(補5)ことを教えました。

 (補5)  1時間の授業が、すべてこのまとめ部分に集約されることを感じ取っていただけたでしょうか。授業を「焦点化(シンプルに)」するというのは、こういうことなのです。
先にも書きましたが、国語科という教科の本質が理解できていないと、焦点化を図ることはできません。このことについては、別の機会に詳しく解説します。

 

 

(3)第3時-本論の読みⅡ

 

④段落をペアで1文交代音読したあと、③段落の観察カードを例示し、「ウィルソンになって、実験の観察カードにまとめよう」と課しました。

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テキストを閉じさせ、④段落のセンテンスカードを黒板に掲示し、子どもたちにも配りました。(補1) 文の順番は大幅に変えてあります。(補2) これによって、子どもがどんな順序で実験したのかという課題意識を持つことになります。

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 さらに、思考の補助具として「あり」と「たくさんのあり」のさし絵を配り、(補3)ペアでカードを並べ替えさせました。その際、接続語に着目することを付け加えました。
ペアでの作業は、その組み合わせによってバラツキが大きいです。子どもたちに任せてしまったのですが、困難が予想されるペアには積極的に介入して司会役をした方がよかったかもしれません。失敗から学ぶと考えるか、成功体験こそが大事だと考えるか、ケースバイケースの判断が求められます。


  (補1)  黒板に掲示するセンテンスカードのミニチュア版は、遠い板書のカードを読むことより、手元のカードを実際に操作しながら考えられることがポイントです。「個別の配慮」を要する子がいる時は、特に有効です。
 (補2)  順序を変えるというのは、授業の「しかけ」の1つです。「しかけ」は、子どもにやりたいという気持ちにさせるためのものです。
  (補3)  挿絵カードは、前時の劇化と同じく授業を「見える化」するための道具です。絵カードを文章に合わせて動かすことで、内容がイメージできます。

 

ペアで発表したあと、全体で動作化により確かめていきました。そして、オ→ケ→カ→ク→エ→イ→ア→オ→ウの順であることを確認しました。

 

いよいよ、前時の活動を生かしながら観察カードにまとめる段階です。

まず、センテンスカードを「調べ方」「結果」「分かったこと」に分けさせ、記号に青・赤・黒の丸を付けさせました。

そして、観察カードの該当箇所にセンテンスカードを貼らせた。最初の計画ではカードに書かせるつもりでしたが、それに要する時間を考えて貼り付ける方法にしました。


「分かったこと」は、「帰るときも、行列の道すじはかわりません。」という1文ですが、これでは不十分です。そこで、「帰るときも」の「も」の役割に着目し、「行く時はどうなっていたのか」と問いました。欠落している主語も補う必要があります。

次のように整理しました。

「ありの行列は、行くてをさえぎってもまたできるし、帰るときの道すじも変わらない」

 

 

(4)第4時-本論の読みⅢ


⑥段落は、キーワードを抜いた要点の文を示し、テキストから答えを見つけさせました。

「ウィルソンは、はたらきありの体のしくみを研究してみると、ありはおしりのところからとくべつのえきを出すことが分かった。」

 

⑦段落は、「この研究から、ウィルソンは、ありの行列のできるわけを知ることができました。」という1文です。

これをできるだけ短くまとめるように指示しました。ペア学習で、いい場面に出会いました。一人は、「ありの行列のできるわけを知った。」とまとめていました。それを見た他の一人が、「主語がないとダメだろ。」と助言しました。第1時の学習が生きています。

(補) 「三段構成」、「尾括型」というのは、文章全体に限定したことではありません。

本教材では、「中」のまとまりが「事例Ⅰ」「事例Ⅱ」に細分されました。そして、その両方が「三段構成」になっていて、「はじめ」に「問い」があり「終わり」に「答え」があります。これは、他のたいていの説明文教材においてもそうです。


さらに、意味段落に限らず1つ1つの形式段落においても、多くの場合は最後の文が中心文という「尾括型」になっています。ときどきは「頭括型」や「両括型」の段落もあります。いずれにしても、段落の要点をまとめる際には、最初と最後の文を読めば中心文が見つかるわけです。このことが分かると、子どもの要点文の精度は見違えるほど速く正確になります。


さらにさらに、「尾括型」を自分のものにした子どもたちは、テストの長文問題の読解や算数科の全国テスト「B問題」なども苦にしなくなります。押さえどころが掴めるからです。


さらにさらにさらに、「尾括型」「頭括型」「両括型」は「話す」「書く」といった表現活動で活せます。「三段構成」の学習は、小学校学力のキモ中のキモなのです。

 

次回は、要約です。