教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

説明文を読む(28)3年「ありの行列」③

3年「ありの行列」(光村図書)

 

2 論理の展開に着目して,教材文を読む。

・文章を「初め」「中」「終わり」に分け,「問い」「答え」がどの段落にどのように書かれているかを探す。

・P102下段「つながりを考えるとき」を参考に,接続語や指示語を手がかりとして,「問い」から「答え」までの論の進め方を確かめる。

ウイルソンの研究の進め方,ありが行列を作る仕組みについて,書かれていることを要約する。

・文末などに着目して,「調べたこと」と「考えたこと」を読み分ける。

 

前々回は、「・文章を「初め」「中」「終わり」に分け,「問い」「答え」がどの段落にどのように書かれているかを探す。」に該当する部分の授業記録を紹介しました。

yosh-k.hatenablog.com

 

前回は下記に該当する「本論(なか)」の読み部分の授業記録を紹介しました。

・P102下段「つながりを考えるとき」を参考に,接続語や指示語を手がかりとして,「問い」から「答え」までの論の進め方を確かめる。

・文末などに着目して,「調べたこと」と「考えたこと」を読み分ける。

yosh-k.hatenablog.com

 

今回は、「ウイルソンの研究の進め方,ありが行列を作る仕組みについて,書かれていることを要約する。」に該当する要約の授業を紹介します。

 

(5)第5時-要約


授業の冒頭、各ペアにストップウォッチを持たせ、できるだけ速く役割音読するように求めました。

どんなにがんばっても2分以上かかります。タイムを確認して、「1分以内で文章の内容を伝えてほしい。どうすればいいか考えよう。」と課題を出しました。要約の必要感を持たせるための仕掛けです。

 

そこで、段落の要点を書いたセンテンスカードを黒板に貼った。

f:id:yosh-k:20200308131321j:plain

ここでは一覧表になっていますが、実際には「はじめ」の①は水色模造紙、「中」の②から⑧は黄色模造紙、「終わり」の⑨は桃色模造紙に印字したセパレートカードになっています。「視覚化」です。

 

①のカードを読んだ途端、子どもから「おかしい」という声が上がりました。「間違っている」と言います。「先生が間違えるはずないだろ。」と言うと、「ありの行進ではなく、行列だ。」と言い張ります。「そうだっけ?」ととぼけてノートを振り返らせたあたりから、子どもが前のめりになってきました。


②からはペアで間違い探し読みをさせました。ペアによる問題解決、説明活動、さらには友だちの発言の再現・解釈といった活動は、「共有化」のためのてだてです。この間違いセンテンスカードも筑波大付小の桂さんの授業からもらったものですが、自分でも驚くほど子どもに受けました。

 

正しい要点文ができあがったので、①から⑨を通して読んでみようと呼びかけました。ストップウォッチを持っていた子どもたちは、その所要時間がおよそ1分であることに気づきました。

そこで、全文要約は段落の要点をつなげて話せばいいこと、必要な接続語を補足することなどを確認しました。--これが一般的な要約文です。

 

桂さんはこれを「書き手の要約」とよび、それを「読み手の要約」(時間の長短や知りたい事柄などの条件に応じた要約)につなげる授業を見せてくれました。それを真似て、「書き手の要約から読み手の要約へ」というのが「焦点化」した課題です。

 

「おうちの人は忙しいので、1分間も聞いてられないかも…。今度は20秒程度で話せないかな。」と投げかけてみました。

考えていく中で、カードの色の違いが文章構成を表していることに気づきました。

そして、「はじめ」の①、「中」のまとめである⑧、「終わり」の⑨をつないでいったのです。


「10秒以内だったらどうする?」と聞くと「①と⑨のカード」、「5秒以内だったら?」と聞くと「⑨だけ」と、時間の長短による要約の仕方を掴んでいきました。


最後に、「どのようにしてありの行列のでき方が分かったの?」と聞かれたら、「中」の部分を詳しく話せばいいことなどを伝えて、授業を終えました。

 「要点」、「要約」、「要旨」について若干補足します。

 ■ 「要点」…形式段落を短くまとめたもの。段落の中心文を見つければよい。
 ■「要約」…文章全体を短くまとめたもの。基本的には、各形式段落の要点をつないでいくと「要約」になる。
 ■「要旨」…その文章で筆者がもっとも言いたいこと。一般的に「まとめ」の段落の「要点」が「要旨」である。上の例では「⑨だけ」というのが「要旨」になる。

教科書や教科書会社の指導書には、「要約」と「要旨」の混同・誤用が目立ちます。きちんと区別して使い分けてほしいものです。  
       

 

 国語教材を使った授業のユニバーサルデザイン化について、より理解を深めるには、白石範孝さん(筑波大学附属小学校、現在は明星大学教授)の『白石範孝の国語授業の教科書』(2012年 東洋館出版社)と『白石範孝の国語授業の技術』(2013年 東洋館出版社)、桂聖さんの『国語授業のユニバーサルデザイン―全員が楽しく「わかる・できる」国語授業づくり』(2011年 東洋館出版社)が最良のテキストです。また、具体的な授業づくりには、桂さんの『教材に「しかけ」をつくる国語授業10の方法 文学アイデア50』(2013年 東洋館出版社)『教材に「しかけ」をつくる国語授業10の方法 説明文アイデア50』(2014年 東洋館出版社)がお薦め。