教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

国語力を磨こう ⑨ なぜ国語力なのか

教壇に立つ前に、なぜ国語力を磨こうなのか。今回はそのことについて書きます。

 

話は21世紀初頭に遡ります。

経済協力開発機構OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査(Programme for International Student Assessmentの頭文字を取ってPISAと言います)が、2000年から3年おきに実施されています。

この調査は、義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを 読解力、 数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野から測るものです。

初回2000年の日本の成績は、読解力8位、 数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2位でした。そして迎えた2003年の第2回テストで、日本の成績は読解力14位、 数学的リテラシー6位、科学的リテラシー2位に沈みました。

これが、2003年の「PISAショック」といわれるものです。

 

当時の日本は、2002年度に新しい学習指導要領が実施され、「生きる力」を育む「総合的な学習の時間」がスタートしたばかりでした。これは、知識偏重の詰め込み教育を是正するものでもありました。

 

そこへ突然の「PISAショック」です。

 

潮目は一気に変わりました。

 

変化はいわゆる「テスト学力」へ重心を戻すものでしたが、単なる過去への回帰ではありませんでした。端的に言えば、国際水準となりつつあるPISAが求めている学力(PISA学力)を高める、そのためには基礎学力も高めるという路線です。

 

PISA学力における読解力とは、論理的な文章を読み解く力です。あるいは図表やグラフなどの非活字資料から必要な情報を取捨選択し、論理的に活用する力です。

数学的・科学的リテラシーの「リテラシー」は、「適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する」という意味あいの言葉です。ここでも論理的な力が求められていることが分かります。

つまり、PISA学力というのは論理力なのです。

 

そうした経緯から、いま求められている学力とは論理力です。

そして、論理的思考力・論理的表現力の基礎となる力は、国語科の説明的文章の授業に負うところが大きいのです。私の経験で言えば、国語科で身に付けた論理的な力は、算数の文章題や他教科の学習に大いに役立つものです。さらに、アクティブラーニングが本格的に導入されれば、論理力はいっそう重要になります。

 

いまどきの学力が求めている読解力・表現力は、尾括型の論理的文章を読み取り、頭括型または両括型で表現する力です。

 

小学校の説明文教材(論理的文章)は、基本的に結論が最後にある尾括型の文章です。文章構成としては「はじめ(序論)-なか(本論)-おわり(結論)」の三段構成で、内容的には「問い(話題提示)-説明-答え(主張)」となっています。

つまり、小学校における説明文教材の指導とは、三段構成を正しく読み取る力をつけることなのです。


こうした身につけた三段構成を正しく読み取る力は、表現力に生かされます。

 

意見を述べたり、討論に参加する際には、頭括型が基本になります。

まず結論を言う、そのあとに理由を述べるというものです。


長めに意見を述べたり意見文を書いたりするときは、両括型を使います。

つまり、まず結論、そのあとに理由、最後にもう一度結論というパターンです。

 

いずれにしても、三段構成の読み取りで培った力が生きてくるのです。

国語力が、多教科の学力の基盤となり下支えすると言ってもいいでしょう。

そのためには、まず教師がその力量を備えなければなりません。

 

国語力を磨くことは、教師力を磨くことでもあるのです。