久しぶりに教科書を手にする機会がありました。
光村図書出版の「小学校 国語 5年」です。
ページを繰っていくと、「2 文章の要旨をとらえ,自分の考えを発表しよう」という5月教材の説明文単元がありました。
今年はコロナ禍休校の最中だったから、満足な授業ができてないんだろうなと思いつつ……。昔を思い出して、教材研究をしてみました。
光村図書のホームページにある「年間指導計画例」では、単元の7時間を次のように配当しています。
単元構成は、「見立てる」という練習文と、「言葉の意味が分かること」という本文から成っています。練習文で学び方を習得し、本文でそれを生かすという昔からある光村のパターンです。
小学校で学ぶ説明的文章は、基本的には尾括型の三段構成の文章です。
「三段構成」は、「はじめ(序論)」「なか(本論)」「おわり(結論)」という構成の文章です。
「尾括型」は、「おわり(結論)」に「答え(まとめ、主張)」が出てくる文章です。
小学校における説明文(論理的な文章)教材では、尾括型の三段構成の文章を読み取れる力をつけることが中心課題になります。
具体的には、「ありの行列」の授業記録をごらんください。
さて、この単元の教材は、ちょっと違います。
三段構成の文章であることには違いありませんが、筆者の「主張」が「おわり(結論)」の部分だけではなく、「はじめ(序論)」の部分にも出てきます。
「両括型」の文章です。
要旨の話をする前に、「要点」、「要約」、「要旨」という言葉の整理をしておきます。
■ 「要点」…形式段落を短くまとめたもの。段落の中心文を見つければよい。
■「要約」…文章全体を短くまとめたもの。基本的には、各形式段落の要点をつないでいくと「要約」になる。
■「要旨」…その文章で筆者がもっとも言いたいこと。一般的に尾括型の三段構成の文章では「まとめ」の段落の「要点」が「要旨」である。
教科書や教科書会社の指導書には、「要約」と「要旨」の混同・誤用が目立ちます。きちんと区別して使い分けてほしいものです。
ちなみに光村教科書の「脚注」には、「要旨 筆者が文章で取り上げている内容の中心となる事がらや、それについての筆者の考えの中心となる事がら。」と記されています。正確を期そうとしているのでしょうが、小学生には「その文章で筆者がもっとも言いたいこと」の方が理解しやすいと思うのですが。
「見立てる」も「言葉の意味が分かること」も「両括型」の三段構成の文章ですので、
「はじめ(序論)」と「おわり(結論)」の段落の要点をもとに要旨をまとめることになります。