教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

元小学校教員による小中連携授業⑦ 答えの写し方教えます

2019年度、地元の中学校の1年生を対象に行った元小学校教員による小中連携授業の記録です。
ゲストティーチャーという位置づけで、総合的な学習の時間のコマを使って年間15回の「授業」を行いました。

 

第7回 答えの写し方教えます


第7回は9月下旬、前期の最終回として実施しました。


今回は、「答えの写し方」というちょっと目を疑うようなテーマです。

 

小学校では、ドリルや問題集の答えは切り離して先生が保管していることが多いです。答えが子どもの手元にある場合でも、「答えは写してはダメ」と教えられているはずです。これが小学校の「文化」です。

中学校では、解答と解説が別冊になっていることが多く、たいていの場合生徒が保管しています。定期テスト期の提出時には、自分で答え合わせと間違い直しをして提出します。私が行っている中学校では、間違いは消さずに赤ペンで正しい答えを書き写すように指導されています。

 

放課後学習教室に来る子たちを見ていると、この答え合わせと間違い直しが気になって仕方ありません。

提出期日が迫ってくると、はなから答えを書き写す輩もいます。これは問題外。

マル付けをしながら間違った問題にチェックを入れて、正解を書き写します。解けなかった問題は空欄になっていて、これもまた正解を書き写します。そして、次の問題に移ります。その間のスピードが実に速いのです。私には、そのわずかな間に理解と納得があったとはとても思えないのです。

もしも間違い直しが単に体裁を整える作業になっているとしたら、時間のムダでもったいない話です。

というわけで、「答えの写し方」を指南するという挙に至ったわけです。

 

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「易しい問題の答えは丁寧に書き写す、難しい問題の答えは写さない」というのが、私流の基本的な考え方です。

 

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「基本問題」が解きやすいのは、いま学習している「解答に必要なワザ」が見えやすいからです。

「応用問題(難問)」が解けないのは、「解答のワザ」が高度だからではありません。使う「ワザ」は基本問題と同じです。ではなぜ難しいかというと、使うべき「ワザ」が見えにくいからです。

「難問」はその難度が増すほど、「基本」を包んでいる「仕掛け」が複雑です。この「仕掛け」を外し、「基本」のカタチにしていく過程が難しいのです。(このあたりのことはシリーズの⑨で詳しく触れます)

 

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難問の「良問」は、1冊の問題集にそれほど多くはありません。その答えを安易に写すのは実に勿体ないことです。

高校入試の「過去問」などは、いわば「仕掛けを外す」力を試す場です。自力で外せなかったら、入試の本番では役に立ちません。答えを丸写しなんて何の意味もないのです。