教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

文章の要旨をとらえる(5年 国語)⑤

字数指定の課題の先にあるもの

 

「要旨を150字以内にまとめよ」という字数指定付きの課題を見て、「来たか」と思いました。

 

小学校の国語にこうした課し方があったのかどうか定かでなく、少なくとも指導したという記憶はありません。

 

昨年度、知人に頼まれて中学3年の子の家庭教師をしていました。

中2の夏から1年間は数学を中心に、ときどき英語の勉強を見ていました。

中3の夏になって、進学先を考える時期になりました。現実問題として、手の届きそうな選択肢から具体的な高校を絞り込んでいくことになります。

彼が選んだ高校の入学試験は2回あって、1回目は国語と小論文のみ、2回目は5教科というものでした。

中学校の進路指導では5教科の試験をすすめられました。しかし、私には5教科もの受験準備は容量オーバーを起こすと思われました。

実は5教科で最も苦手なのが国語で、定期テストで20点を超えたことはありません。その国語1本に絞って準備をしようと提案しました。

 

私の分析では、試験で45点取って小論文を無難にこなせば合格すると踏みました。

過去問を徹底的に分析して出題傾向をつかみ、45点を取る方策を考えました。与えられた時間は半年です。

 

漢字の読み書き問題は稼ぎどころですが、ほぼできません。覚える量の多さと配点の低さというコスパを考えると、これに膨大な時間を費やすのはもったいないです。「当たればラッキー」で済ませることにしました。

 

文法(敬語、助詞・助動詞、活用、接続語)の問いは、大体の出題傾向が分かります。これはくり返し練習して、覚えてもらいました。

 

古典は入り口だけ押さえました。古文は現代語への書き換え、漢文は返り点の読み下しのみで、意味内容は不問にしました。

 

さて、ここまでの対策では20点にも届きません。点数を稼ぐには文章題の読みを何とかしなければなりません。

 

文章問題は2問あって、1つは文学作品で1つは説明文です。

長文を読むだけで相当な時間を要しましたので、文学は捨て説明文に絞って対策しました。

 

読めない漢字、意味の分からない言葉が多くありましたが、一切無視してざっと目を通す程度の読みでいいと言いました。

 

どんな長文でも、まとめ(主張)は最初の段落か最後の段落にあって、その中でも大事なことは段落の終わりの文に書いてあることが多い。そこだけしっかり読めばいいと教えました。

 

「筆者の主張を書け」という問いは、それで何とかなります。

 

今なぜこんなことを書いているかというと、高校入試を含めて中学校での問いには「○字以上○字以内で答えよ」という字数指定がほぼ例外なく付いています。

小学校では稀であっても、中学校ではスタンダードです。高校入試は目的でもなければゴールでもありません。しかし、ほとんどの子が通過し、その後の人生への影響も大きいことを考えると、「要旨を150字以内にまとめよ」は大事な出発点かもしれません。

 

事実、私が彼に教えたことは、要旨をまとめる授業のノウハウそのものだったのです。

 

もう一つ、図やグラフなどの資料を示して、そこから分かることとそれについての自分の意見を自身の体験を交えて書けという問題もよくありました。もちろん字数指定付きです。

これもまた、光村5年の「資料を用いた文章の効果を考え、それをいかして書こう」単元の延長にある問いです。

 

入試の本番で、彼は50点程度(自己採点)を確保したようです。

 

小論文は、受験動機や学校生活、将来に関する課題について○字以内で書けというものです。

作文は特に苦手で、原稿用紙を前にすると思考停止に陥るようです。

課題を3つ設定して、話し合いながら内容を膨らませ、文章化していきました。「両括型」の文章構成も指導しました。

完成した文章を毎日読ませ、何度か試写させ、試験前には暗写できるようにさせました。本番で問いが少し違っても書き切るように言い含めました。字数をクリアしていて、文脈が整っていれば半分以上配点されます。

実際は、ほぼ完璧だったそうです。

 

彼は見事合格。中学校の先生を驚かせたようです。

 

そんな経験をしてわずか半年ほどのタイミングで「要旨を150字以内にまとめよ」という字数指定付きの課題を見たものですから、「来たか」と思ったわけです。

この課題、子どもたちにとっては長い付き合いの始まりになりそうですよ。指導する者も、その気構えをもって当たらねばなりません。