教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

説明文を読む(11)5年「言葉の意味が分かること」②

5年「言葉の意味が分かること」(光村図書)②

 

要旨をまとめます。

 

2020年秋の記事を再掲します。

yosh-k.hatenablog.com

 

「言葉の意味が分かること」の要旨をとらえる(その2)

 

いよいよ要旨をまとめるのですが、なかなかの難題です。

 

難題1 段落の要点を取り出すのが難しい

難題2 要旨をまとめる際に「150字以内」という字数制限が設けられている

 

 

まず、「はじめ」と「おわり」の段落の要点をまとめます。

 

「はじめ」①段落

4文省略

「言葉の意味が分かる」ことは、あなたが思う以上におく深いことです。なぜなら、言葉の意味には広がりがあるからです。このことを知っておくことは、言葉を学ぶときに役立ち、ふだん使っている言葉やものの見方を見直すことにもつながります。

《要点》

中心文は「「言葉の意味が分かる」ことは、あなたが思う以上におく深いことです。」でしょうが、これをもって段落の要点とするには役不足です。あとの2文も加えます。

「言葉の意味が分かる」ことは、おく深いことだ。なぜなら、言葉の意味には広がりがあるからだ。このことを知っておくことは、言葉を学ぶときに役立ち、ふだん使っている言葉やものの見方を見直すことにもつながる。

 

「おわり」⑪・⑫段落

⑪段落

2文省略

しかし、言葉の意味には広がりがあり、言葉を適切に使うためには、そのはんいを理解する必要がありますつまり母語でも外国語でも、言葉を学んでいくときには、言葉の意味を「面」として理解することが大切なのです

《要点》

言葉の意味には広がりがあり、言葉を適切に使うためには、そのはんいを理解する必要がある。つまり、言葉を学んでいくときには、言葉の意味を「面」として理解することが大切だ。

⑫段落

さらに言葉の意味を「面」として考えることは、ふだん使っている言葉や、ものの見方を見直すことにもつながります

2文省略

これらの例は、知らず知らずのうちに使い分けている言葉を見直すきっかけとなります。そしてわたしたちが自然だと思っているものの見方が、決して当たり前ではないことにも気づかせてくれます

3文省略

《要点》

さらに、言葉の意味を「面」として考えることは、ふだん使っている言葉や、ものの見方を見直すことにもつながる。そして、わたしたちが自然だと思っているものの見方が、決して当たり前ではないことにも気づかせてくれる。

 

要旨をまとめます。

「言葉の意味」が話題で、「分かる」「広がり」「面」という言葉も外せません。

「はじめ」と「おわり」の段落の要点を使います。

「文章の要旨を百五十字以内でまとめよう。」という字数制限があります。

 

「言葉の意味が分かる」ことは、おく深いことだ。なぜなら、言葉の意味には広がりがあるからだ。言葉を学んでいくときには、言葉の意味を「面」として理解することが大切だ。さらに、言葉の意味を「面」として考えることは、ふだん使っている言葉や、ものの見方を見直すことにもつながる。

これで134字です。

①の「このことを知っておくことは、言葉を学ぶときに役立ち、ふだん使っている言葉やものの見方を見直すことにもつながる。」は⑪⑫に出てくるので省略です。⑫の「そして、わたしたちが自然だと思っているものの見方が、決して当たり前ではないことにも気づかせてくれる。」も省いています。

これだと150字以内に整えるのは容易です。

 

⑫の「そして、わたしたちが自然だと思っているものの見方が、決して当たり前ではないことにも気づかせてくれる。」を加えてみます。

「言葉の意味が分かる」ことは、おく深いことだ。なぜなら、言葉の意味には広がりがあるからだ。言葉を学んでいくときには、言葉の意味を「面」として理解することが大切だ。さらに、言葉の意味を「面」として考えることは、ふだん使っている言葉や、ものの見方を見直すことにもつながる。そして、わたしたちが自然だと思っているものの見方が、決して当たり前ではないことにも気づかせてくれる。

これだと184字です。

34字以上の削減が必要です。挑戦してみます。

「言葉の意味が分かる」ことは、言葉の意味には広がりがあるのでおく深いことだ。言葉を学ぶときには、言葉の意味を「面」として理解することが大切になる。そのことは、ふだん使っている言葉や、ものの見方を見直すことにもつながり、自然だと思っているものの見方が、決して当たり前ではないことにも気づかせてくれる。

149字になりました。

 

唯一絶対の正解なんてあるようなないような。「主体的で深い学び」のためには許容の幅が必要です。外してはならないポイント(話題、キーワード、キーセンテンス)さえ押さえられていれば、それでいいと私は思います。

 

 

さて、ここでの学習には直接は関係ありませんが、2020年に書いた次の文章を再掲します。5年生の学習がどこにつながっているのかという「位置」を知ることは、指導者として必要なことだと思います。

yosh-k.hatenablog.com

 

字数指定の課題の先にあるもの

 

「要旨を150字以内にまとめよ」という字数指定付きの課題を見て、「来たか」と思いました。

 

小学校の国語にこうした課し方があったのかどうか定かでなく、少なくとも指導したという記憶はありません。

 

昨年度、知人に頼まれて中学3年の子の家庭教師をしていました。

中2の夏から1年間は数学を中心に、ときどき英語の勉強を見ていました。

中3の夏になって、進学先を考える時期になりました。現実問題として、手の届きそうな選択肢から具体的な高校を絞り込んでいくことになります。

彼が選んだ高校の入学試験は2回あって、1回目は国語と小論文のみ、2回目は5教科というものでした。

中学校の進路指導では5教科の試験をすすめられました。しかし、私には5教科もの受験準備は容量オーバーを起こすと思われました。

実は5教科で最も苦手なのが国語で、定期テストで20点を超えたことはありません。その国語1本に絞って準備をしようと提案しました。

 

私の分析では、試験で45点取って小論文を無難にこなせば合格すると踏みました。

過去問を徹底的に分析して出題傾向をつかみ、45点を取る方策を考えました。与えられた時間は半年です。

 

漢字の読み書き問題は稼ぎどころですが、ほぼできません。覚える量の多さと配点の低さというコスパを考えると、これに膨大な時間を費やすのはもったいないです。「当たればラッキー」で済ませることにしました。

 

文法(敬語、助詞・助動詞、活用、接続語)の問いは、大体の出題傾向が分かります。これはくり返し練習して、覚えてもらいました。

 

古典は入り口だけ押さえました。古文は現代語への書き換え、漢文は返り点の読み下しのみで、意味内容は不問にしました。

 

さて、ここまでの対策では20点にも届きません。点数を稼ぐには文章題の読みを何とかしなければなりません。

 

文章問題は2問あって、1つは文学作品で1つは説明文です。

長文を読むだけで相当な時間を要しましたので、文学は捨て説明文に絞って対策しました。

 

読めない漢字、意味の分からない言葉が多くありましたが、一切無視してざっと目を通す程度の読みでいいと言いました。

 

どんな長文でも、まとめ(主張)は最初の段落か最後の段落にあって、その中でも大事なことは段落の終わりの文に書いてあることが多い。そこだけしっかり読めばいいと教えました。

 

「筆者の主張を書け」という問いは、それで何とかなります。

 

今なぜこんなことを書いているかというと、高校入試を含めて中学校での問いには「○字以上○字以内で答えよ」という字数指定がほぼ例外なく付いています。

小学校では稀であっても、中学校ではスタンダードです。高校入試は目的でもなければゴールでもありません。しかし、ほとんどの子が通過し、その後の人生への影響も大きいことを考えると、「要旨を150字以内にまとめよ」は大事な出発点かもしれません。

 

事実、私が彼に教えたことは、要旨をまとめる授業のノウハウそのものだったのです。

 

もう一つ、図やグラフなどの資料を示して、そこから分かることとそれについての自分の意見を自身の体験を交えて書けという問題もよくありました。もちろん字数指定付きです。

これもまた、光村5年の「資料を用いた文章の効果を考え、それをいかして書こう」単元の延長にある問いです。

 

入試の本番で、彼は50点程度(自己採点)を確保したようです。

 

小論文は、受験動機や学校生活、将来に関する課題について○字以内で書けというものです。

作文は特に苦手で、原稿用紙を前にすると思考停止に陥るようです。

課題を3つ設定して、話し合いながら内容を膨らませ、文章化していきました。「両括型」の文章構成も指導しました。

完成した文章を毎日読ませ、何度か試写させ、試験前には暗写できるようにさせました。本番で問いが少し違っても書き切るように言い含めました。字数をクリアしていて、文脈が整っていれば半分以上配点されます。

実際は、ほぼ完璧だったそうです。

 

彼は見事合格。中学校の先生を驚かせたようです。

 

そんな経験をしてわずか半年ほどのタイミングで「要旨を150字以内にまとめよ」という字数指定付きの課題を見たものですから、「来たか」と思ったわけです。

この課題、子どもたちにとっては長い付き合いの始まりになりそうですよ。指導する者も、その気構えをもって当たらねばなりません。