教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

「学びの共同体」と「授業のユニバーサルデザイン化」で授業改革を⑥

「授業のユニバーサルデザイン化」②

 

今回は、「授業のユニバーサルデザイン化」をすすめるための具体的な手立てを紹介します。

 

教科は国語、領域は「説明文」です。

テキスト(参考文献)には、

『授業のユニバーサルデザインvol.4』(授業のユニバーサルデザイン研究会 桂聖・廣瀬由美子編著、東洋館出版社、2012.3。1980円)
『国語授業のユニバーサルデザイン』(桂聖著、東洋館出版社、2011.2。1870円)

を使っています。

 

説明文の教材研究の方法

 

2012年9月、同僚教員の指導案作成の資料として作成した文章です。

後半に紹介している2012年度4年生の指導案は、この方法に則って作成されています。そちらを参照しながら読んでください。

 

【ステップ1】 一人の読者として文章(教材)を読む


一人の読者として、読んで印象に残ったことを書いておくとよい。
・1番おもしろかったところは?
・「なるほど」と納得したところは?
・疑問に思ったことは?
・納得できなかったところは?

 

【ステップ2】 5つの読みの観点から、教材の特性を導き出す


※5つの読みの観点とは

①要点
②問いと答え
③説明文特有の表現方法
④三段構成
⑤要旨や意図


※5つの読み方には、それぞれ、下位内容の論理的な読み方がある。
①要点…「主語、述語がわかる」「中心文をさがす」「中心文を要約するには述語から短くする」という方法が必要。
③表現技法…○接続語…段落相互の関係を考えながら読むことができる。
○文末表現…事実と意見を区別して読むことができる。
○指示語
内容的な特徴だけでなく、文章を読み解く方法や論理に着目する。

 

【ステップ3】 指導内容(読み方)を確定する


学習指導要領や指導書を参考にして、言語活動や指導内容を確定する。教科書には、言語活動や指導内容のヒントが書かれているので、それを参考にするとよい。


※注

指導事項…学習指導要領に書かれているもの
指導内容…「教材の特性」「言語活動」「指導事項」「子どもの実態」から導き出した、授業で具体的に教える内容

 

【ステップ4】 問題解決的な展開で、単元の指導計画を立てる


第一次 学習の計画を立てる(学習のイメージや見通しを持つ)
第二次 共通教材で精読する(論理的な読み方を習得する)
第三次 発展読書や表現活動をする(論理的な読み方を活用する)

 

【ステップ5】 問題解決的な展開で、授業の指導計画を立てる


「課題意識を引き出す → 内容のイメージ化 → 論理のイメージ化 → 全員の表現活動」というおおまかな流れで授業を構成する。 

 

 

 

※参考文献『教材に「しかけ」をつくる国語授業10の方法 文学アイデア50』(授業のユニバーサルデザイン研究会沖縄支部著・桂聖編著、東洋館出版社、2013.2。2310円)・ 『教材に「しかけ」をつくる国語授業10の方法 説明文アイデア50』(授業のユニバーサルデザイン研究会沖縄支部著・桂聖編著、東洋館出版社、2013.4。2310円)

 

 

教材研究から指導案へ 

 

2012年度の授業記録の一部です。

 

(1) 略

 

(2) 校内研究授業


① 単元名  くらしの中の世界について調べよう

教材名 「くらしの中の和と洋」(東京書籍 小学校4年下)


② 目標
○まとまりごとの内容をおさえて、何をどのように比べているかを考えながら読み取る。【読むこと】
○くらしの中の「和」と「洋」について、調べたことを文章にまとめる。【書くこと】

 

③ 指導について
○ 本単元では、暮らしの中の日本の文化と外国の文化について、いろいろな本や資料で調べる活動を通して、文章から必要な情報を読み取る力と2つのものを比べて書く力をつけることをねらいとしている。
 教材文は、児童が気づきにくい「和」と「洋」の違いやそれぞれの良さを対比して分かりやすく説明している。この文章構成に気付き、目的をもって、「住」の「和」と「洋」それぞれの良さを読み取る力を身につけさせたい。教材文から児童の視野を広げ、この後の「衣」や「食」について調べようという意欲につなげることが期待できる。本教材では、児童自身が自分の決めた「和と洋」について調べ、「『くらしの中の和と洋』ブック」を作るという目的のために、複数の本や資料から必要な情報を読み取り、文章を引用したり要約したりする活動を設定している。


○ 1学期の説明文教材「ヤドカリとイソギンチャク」では、段落の結び付き(三段構成)や段落ごとの要点に焦点を当てて学習した。また、6月には「ありの行列」(光村図書、3年)を用いて、意味段落の要点をまとめたり全文を要約したりする学習をしてきた。それらを通して、子どもたちは読みの基本的なスキルは身につけている。しかし、日常の学習においては、初読の文章では読みがくだらない子が半数を占め、また既習内容の定着率も高いとは言えない。こうした実態から、1学期の学習内容を確かめる活動を組み入れつつ、対比という新しい技法を習得させていく必要があると考える。


○ 本単元では、「読みながら書く力」「書きながら読む力」を育てるために、次の具体的な内容を指導する。
・和室と洋室の良さを取り入れて生活していることを読み取る。
【内容の理解】
・「話題」に対して「問い」と「答え」があることを理解する。
【述べ方の理解】
・分かりやすくするための段落相互の関係と文章構成を理解する。
【述べ方の理解】
・対比して和と洋について記述した筆者の意図を解釈する。
【筆者の意図の理解】
・和と洋について対比を意識して読む、書く。
【対比して読む・書く力の活用】


 指導にあたっては、子どもが目的を持ち「対比して読む・書く力」を身につけることができるように次の4点を重視する。


◆ポイント1◆読む活動と書く活動とが関連するように仕組む
 説明文を読む力は、内容ばかりでなく筆者が説明するための方法や論理、述べ方を読み取ることが重要である。子どもの身近な和と洋について想起できるようにし、「『くらしの中の和と洋』ブック」を作るという目的を持てるようにすることで、説明されている内容だけでなく表現方法に目を向けることができるようにする。


◆ポイント2◆文章構成や述べ方の工夫に気づくように仕組む
 文章構成や述べ方に目を向けるようにするためには、その工夫が見えるようにする活動がポイントになる。そこで、形式段落レベルで「和室」「洋室」について書かれている文や段落を色分け(赤青の線引き)する。色分けできなかった「和室と洋室の両方が書かれている」あるいは「まとめ」等の段落の役割を検討し話し合うことで、文章構成や対比した述べ方の工夫を意識しながら読むことができるようにする。
 分かりやすく説明するために用いた表現技法、対比して述べるとき、順序を述べるとき、まとめて述べるとき、問いかけのときの表現技法と、その表現を使った段落や文のつながり方を明らかにし、説明文を書くときに活用できるようにする。

 

◆ポイント3◆書くための表現技法を活用させる
 分かりやすく説明するために用いた表現技法、対比して述べるとき、順序を述べるとき、まとめて述べるとき、問いかけのときの表現技法と、その表現を使った段落や文のつながり方を明らかにし、説明文を書くときに活用できるようにする。

◆ポイント4◆「『くらしの中の和と洋』ブック」を読み合い、良さを発表させる
 子ども同士が説明文を読み合い、和と洋の違いや良さを話し合うようにする。『くらしの中の和と洋』ブック」を読み合うことを通して、「対比して読む・書く力」の活用の定着を図る。

 

f:id:yosh-k:20201123113033j:plain

f:id:yosh-k:20201123113055j:plain