「授業のユニバーサルデザイン化」④
国語教材のUD化をめざす「教材のしかけづくり」
教材にしかけをつくるというのは、「教材の安定を崩す」ということです。
水の入ったコップが机の真ん中にあれば(安定していれば)、特に何も感じません。しかし、コップの底が机からはみ出すほど端に置かれていたら(安定が崩れたら)、つい声が出るものです。安定していた教材を意図的に不安定な状態にすることで、自ら教材に働きかける能動的な子どもの姿を引き出そうというわけです。
教材にしかけをつくることで、指導の目的が達成されなければなりません。そのためには、教材のしかけづくりという指導方法を通して、どのように文章の内容を理解させたり、どんな論理的な読み方を指導したりしているのかを、常に明確にして指導することが大切です。
説明文の授業でも、文学の授業でも、前稿(「授業のユニバーサルデザイン化」②、「授業のユニバーサルデザイン化」③)の学習用語の系統に基づき、5つの論理的な読み方や各学年における読みの学習用語を想定した上で、ねらいを「焦点化」します。そして、授業のねらいや子どものレディネスを踏まえて、次に示す「10の方法」を参考にしかけを具体化します。
今回のテキストは、『教材に「しかけ」をつくる国語授業10の方法 文学アイデア50』(授業のユニバーサルデザイン研究会沖縄支部著・桂聖編著、東洋館出版社、2013.2。2310円)・ 『教材に「しかけ」をつくる国語授業10の方法 説明文アイデア50』(授業のユニバーサルデザイン研究会沖縄支部著・桂聖編著、東洋館出版社、2013.4。2310円)です。
実際の授業場面では、教材をどの順番で見せるのか(順序)、どんなタイミングで見せるのか(タイミング)、提示する時にどんな言葉がけをかるのか(言葉がけ)を事前に考えておき、子どもの問いやつぶやきを増幅するようにします。
【方法①】順序を変える
○挿絵の順序を変える
○文の順序を変える
○語句の順序を変える
○段落の順序を変える
【方法②】選択肢をつくる
○語句の選択肢をつくる
○文の選択肢をつくる
○段落の選択肢をつくる
○場面の選択肢をつくる
○挿絵の選択肢をつくる
○写真の選択肢をつくる
○題名の選択肢をつくる
【方法③】置き換える
○語句を置き換える
「海のいのち」最後の挑戦⑦で紹介した第6時の授業では、「語句を置き換える」を使っています。
【方法④】隠す
○挿絵を隠す
○記号を隠す
○題名を隠す
○作者名を隠す
○語句を隠す
○文を隠す
「学びの共同体」と「授業のユニバーサルデザイン化」で授業改革を④で紹介した「ゆうすげ村の小さな旅館」(東京書籍)では、「隠す」を使っています。
【方法⑤】加える
○人物を加える
○挿絵を加える
○語句を加える
【方法⑥】限定する
○挿絵を限定する
○文を限定する
○語句を限定する
【方法⑦】分類する
○文を分類する
○挿絵を分類する
○語句を分類する
【方法⑧】図解する
○中心人物の変化を図解する
○因果関係を図解する
○心情グラフを図解する
○人物関係を図解する
「海のいのち」最後の挑戦④で紹介した第5時の授業では、「人物関係を図解する」を使っています。
【方法⑨】配置する
○挿絵を配置する
○挿絵・文を配置する
○文を配置する
「海のいのち」最後の挑戦⑤で紹介した第6時の授業では、「文を配置する」を使っています。
【方法⑩】仮定する
○文を仮定する
○人物を仮定する
○グラフを仮定する
私には実践数が少なくて、紹介できる記録がこの程度しか残っていません。
その浅くて僅かしかない経験からでさえ、子どもたちの姿を重い浮かべながら教材を読み込み 、しかけを考える楽しさは存分に味わえました。どうか桂さんの著書を手がかりにして、一人でも多くの先生たちにこの楽しさを自分のものにしていただきたいと思います。