教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

半藤一利さんに学ぶ現代史

1月12日、半藤一利さんが亡くなられました。

 

半藤さんは1930(昭和5)年5月21日生まれで、行年90歳。天寿を全うし……といったところですが、70代で逝った私の父と同年生まれで、近しさと感慨を覚えます。(1930年生まれには澤地久枝さんもおられます。澤地さんのことは別稿で書く予定です)

 

私が「教師力」というカテゴリーに半藤さんのことを書くには、それなりのワケがあります。

 

私は、一応社会科教師でした。しかし、教職に就くまでに日本の近現代史、とりわけ昭和の歴史をちきんと学んだことは一度もありませんでした。それは、教科書自体の問題もありますが、決定的なのは指導者の問題でした。

歴史学習は、時間軸の古い方から今に向かって進められるのが通常です。どうしたわけか、歴史教師は蘊蓄豊富でおしゃべり好き。年間指導計画はあるはずですが、時代が明治に入ったあたりから新幹線並みの授業になり、昭和に入ると運転終了なんてことがよくありました。受験問題の対象になることがほとんどなかったことも影響していると思われます。

そんなわけで、教師の多くは現代史の正しい知識を持つことなく教壇に立ち、歴史を教えています。

 

 

なんのために歴史を学ぶのか。

 

それは、いまとこれからをいかに生きるかを考えるためだと私は思っています。

「温故知新」は受験用の暗記四字熟語ではありません。

 

そう考えると、いまに最も近い現代史抜きに歴史学習は成立しません。

 

現代史の学びを欠いたまま教壇に立ったのなら、現代史の学び直しが必要です。

学び直しに一推しのテキストは、半藤一利さんの『昭和史』です。

 

『昭和史 1926-1945』(平凡社、2004年)『昭和史 戦後篇 1945-1989』(平凡社、2006年)は、2009年に文庫本になり各990円で入手できます。とても読みやすい文章ですが、戦前篇548ページ、戦後篇614ページと相当なボリュームです。それなりの覚悟が要ります。

 

読み始めると半藤さんの世界にハマるはずで、そんな方には『B面昭和史 1926-1945』(平凡社文庫、2019年、1100円)がお薦めです。『昭和史』を正史とすれば、『B面昭和史』はそれを補う民衆の歴史です。昭和の歴史への理解が厚みを増します。これは655ページの大作です。

 

そもそも、という方には、『歴史に「何を」学ぶのか』(ちくまプリマー新書、2017年、968円)なんかどうでしょう。これは254ページで軽く読めます。

同じく軽く読めるものとしては、『ぶらり日本史散策』(文春文庫、2012年、552円+税)もいいです。

 

逆に深掘りしたい方には、1945年8月14日正午から15日正午までを克明に綴った『日本のいちばん長い日』(文春文庫、2006年、660円)や『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(文春文庫、2014年、616円)がお薦めです。『ノモンハンの夏』も気になっていますが、未読です。

 

個人的興味としては、『幕末史』(新潮文庫、2008年)や『それからの海舟』(ちくま文庫、2008年)も面白かったのですが、これは現代史の範疇から外れます。

 

とにもかくにも、自らの歴史眼を養うために『昭和史』を是非是非読破してください。