教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

デジタル教科書時代・2035年の物語①

デジタル教科書時代「元年」・2021年

 

2021年4月、日本は「デジタル教科書」元年を迎えます。

 

デジタル教科書はすでに存在するのですが、学校現場ではほとんど使われていません。

理由は2つ。紙の教科書が主であり、それが無償で全員に配布されています。デジタル教科書は有償で、財政措置が講じられていません。(デジタル教科書が使える環境については、GIGAスクール構想の前倒しで一応解決したとみなします)

 

 

デジタル教科書は、2018 年の学校教育法等の一部改正等により、2019年度から一定の基準の下で、必要に応じ、紙の教科書に代えて使用することができることとなりました。

一般社団法人教科書協会が2020年7月7日に作成した「学習者用デジタル教科書の概要」で、現状を確認します。

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学習者用デジタル教科書の発行率は95%ですが、普及率は10%にも満ちていません。

 

 

文部科学省は「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」を設置し、2020年7月14日に第1回検討会議を行いました。

その席で配布された資料に、今後のスケジュールが示されています。

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これによると、2024年度の教科書改訂に合わせてデジタル教科書を本格導入することになります。

 

政府は2020年12月18日、経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)を開き、経済・財政政策の改革スケジュールを示した工程表の案をまとめました。
「デジタル教科書の普及促進」に関しては、2024年度の小学校の教科書改訂に合わせてデジタル教科書を本格導入することを目指すとしています。有識者会議(「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」のことです)で制度の見直しも含めた今後の在り方などを検討しており、2021年夏ごろに報告書を取りまとめる予定です。

児童・生徒が利用する学習者用デジタル教科書を導入した小中学校は、2020年3月時点で8.2%にすぎません。これをデジタル教科書の本格導入後の2025年度末までに小中学校で100%の普及率にすることを目指すということです。

 

 

議論は単線ではありません。 

2021年1月27日に行われた第8回示された「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめ骨子案」の中に、今後のスケジュールに関する記述があります。

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議中間まとめ骨子案

(2)今後の教科書制度の在り方についての検討

【デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討】
○ デジタル教科書の本格的な導入に向けて、新たな教科書検定の在り方の検討が求められる。将来的には、教科書の範囲にデジタルの特性を生かして動画や音声等を取り入れることも考えられるところであり、実証研究の成果も踏まえつつ、今後、そのより具体的・専門的な検討を行うことが必要である。
○ なお、令和6年度の小学校用教科書の改訂については、教科書の編集・検定・採択をそれぞれ令和3年度、4年度、5年度に行う必要があり、実際には教科書発行者において既に準備が進められている状況にあることから、本格的な見直しについては次々回の検定サイクルを念頭に検討することが適当と考えられる。

これによると、2024年度から デジタル教科書を本格的に導入するのは無理で、その次の検定が行われる2028年前後ということになります。

ただ、デジタル庁を設置する政権の意向で、2024年度で突き進むことも十分考えられます。まずは、2月下旬に予定されている「中間まとめ」で様子見です。

いずれにしても、2020年代の終わりには、子どもたちが使う教科書はデジタル教科書になっています。 

 

 

学習者用デジタル教科書の使用について、文部科学省萩生田光一大臣は2020年10月23日、授業時数の2分の1未満とする現行基準を見直す考えを表明しました。

それを受ける形で、12月22日の第7回検討会議で文科省は授業時数の2分の1未満としてきた使用基準を撤廃する「基準の見直しに関する案」を示し、了承されました。

 

つまり、2021年度よりデジタル教科書が実質解禁になります。

そして、早ければ2024年度にはデジタル教科書がメインになり、無償化されるでしょう。(紙の教科書も残すでしょうが、配布については不明です。紙とデジタルの両方を無償で提供することは財政上ないと思われます。)

賛否の議論などお構いなしに、「世界基準」としてデジタル教科書時代が始まります。

 

 

デジタル教科書「元年」を前に、次回から、デジタル教科書が定着した2035年を教育をのぞき見したいと思います。