教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

デジタル教科書の近未来

去る8月25日、中央教育審議会「第5回教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ」が開かれました。
会議では「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウェアの在り方について(案)~ 中間報告(論点整理案) ~」が了承され、翌26日の「文部科学省は2022年8月26日、2024年度に小学校5年生から中学3年生の「英語」で先行導入する方針を決めた。その後、その次に現場ニーズの高い「算数・数学」の導入を検討する。当面の間は、デジタルと紙を併用する。」という報道となりました。

 

「デジタル教科書・教材・ソフトウェアの活用の在り方(論点整理案)」に示された論点は次のとおりです。

 

とにもかくにも2024年度から英語のデジタル教科書が導入され、翌25年度以降に算数・数学にも導入が検討されることになりました。

 

9月4日の「朝日新聞」に、中教審作業部会の主査を務める堀田龍也・東北大大学院教授のインタビュー記事が載りました。

デジタル教科書は無償ですが、「デジタル教材の多くは有償で、機能が充実しているほど価格が高くなる。……財政が豊かな自治体と乏しい自治体の格差が生じかねません。」「私見ですが、24年度から数年は、…現場のニーズが高い教材について、一部機能を安価または無償で国が供与する、というやり方があるのではないか。今後の作業部会では、重要な論点となるでしょう。」

私見とは言え、立場のある方の発言は重みがあります。今後の展開に注目したいです。

 


5月26日の第3回部会で示された資料に、興味深い部分があります。

「デジタル教科書・教材・ソフトウェアの活用の在り方」に係るワーキングでの主な意見

③中長期的なデジタル教科書の在り方の視点
・ 未来的な話ではあるが、デジタル教科書で学習ログが取れるようになると可能性が広がる

オンラインドリル等の教材もデジタル教科書という形で新しく生まれてくる可能性がある

・ 教科書が履修を意識して教科書を最初から最後まで順番にやっていくという指導書に偏っている側面がある中で、そもそもの教科書の在り方を議論すべき

・ 教育やコミュニケーションの捉え方自身に根本的に新しい発想が必要であり、GIGAスクール端末が整備されている中で、紙の教科書の在り方も検討する必要がある

・ 短期・中長期に分けて議論せざるを得ない状況にある。紙の教科書と同一の内容のデジタル教科書の普及がゴールではない。教師による一斉授業から児童生徒主体の学びへ、教科ごとから探求教科等の学びというように、学びの在り方が抜本的に変化する中で、教科書がどう変わるのかの議論が必要である

 

中長期の「めざす姿」が現実のものとなるのはいつのことでしょう。私は以前「デジタル教科書時代・2035年の物語」という記事を書きましたが、2035年では無理かもしれませんね。

「デジタル教科書時代の近未来」は、紙の教科書プラスαで経過することになりそうです。

 

GIGAスクール構想に反対であっても、ICT教育が嫌いであっても、社会経済がそれを求めていれば必然的に教育はその方向に進みます。

経済と教育政策と学校現場には大きな「時差」があって、その期間中、現場教師は苦しみ続けることになります。教育行政が早期にコストを費やすことで、教師の負担は相当軽減されます。子どもの豊かな学びのためにも、そんな当たり前を共有したいものです。

 

 

「デジタル教科書」をめぐって

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