最後はそもそも論です。
「個別最適化された学び」を提案する「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」は、「これから到来する Society 5.0 時代を見据え」という文言で始まります。
文部科学省は、「これから到来する Society 5.0 時代を見据え」て、「 ICT を基盤とした先端技術と教育ビッグデータを効果的に活用していくための様々な取組」を示しました。
同時に、中央教育審議会は、「Society 5.0 時代を見据え、義務教育 9 年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方や習熟度別指導の在り方などの今後の指導体制の在り方、教育課程の在り方、児童生徒一人一人の能力、適性等に応じた指導の在り方……をはじめとした様々な方策に関する諮問(「新しい時代の初等中等教育の在り方について」)」について検討しています。
そもそも、「Society 5.0 時代」って何でしょう。
「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」を見てみます。
1.新時代における先端技術・教育ビッグデータを効果的に活用した学びの在り方
(1)来るべき Society 5.0 時代
1990 年代以降、インターネットやスマートフォン等の急速な普及が進み、大量に生み出された情報が世界中を駆け巡り、インターネットを経由して大量の情報やデータにアクセスし、分析することで、新たな価値を次々と生み出すことが可能な時代となってきた。
今、社会は更に大きな変革に直面しようとしている。それは、新たな時代として提唱されている「Society 5.0」(平成 28 年 1 月策定の科学技術基本計画において提唱)にも描かれているように、
○ あらゆるモノがインターネットでつながる「モノのインターネット」(IoT:Internet of Things)により、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値が生み出される
○ 人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、膨大なデータから最適解を導き出すことが可能となる
○ ロボットや自動走行車などのロボティクスの進展により、人間の可能性が大きく広がるといったような変革である。このような「Society 5.0」時代の到来で、次のように社会構造や雇用環境が大きく変化することが考えられている。
「Society 5.0」(ソサエティ5.0)とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と、内閣府の『第5期科学技術基本計画』で定義されています。
「5.0」は「5番目の」といった意味合いです。
ちなみに、
「Society 1.0」は人類が自然と共生しながら狩猟や採集をしてきた狩猟採集社会 、
「Society 2.0」は農耕を基盤に集団を形成し、組織を増大させて国家を築くようになった農耕社会、
「Society 3.0」は産業革命によって工業化を推し進め、大量生産を可能にした工業社会 、
「Society 4.0」はさらに情報化により無形資産をネットワークで結び、多様な付加価値を生み出すようになった情報社会
を指します。
これは、携帯電話の4Gとか5Gというのと同様のナンバリングです。
脱線しますが、「5G」のGはgeneration(世代)の頭文字で、「第5世代移動通信システム」という意味です。
つまり、「個別最適化された学び」は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」である「Society 5.0 時代」を念頭に提唱されている教育のありようだということです。
古い時代の教師である私には、にわかには合点・納得というわけにはいきません。いくつものわだかまりが残ります。しかし、別稿で訪問した2035年の教育は、この流れのただ中にあるのでしょうね。