小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第2回は「頭が上がらない」です。
教科書に取り上げられた「頭」のつく慣用句は3つあります。今回はその1つ目。
頭が上がらない
「頭が上がらない」の読み方
あたまがあがらない
「頭が上がらない」の意味
相手に負い目があったり、権威に圧迫されたりして、対等に振る舞えない。(広辞苑)
「頭が上がらない」の使い方
「マイナビウーマン」に、前田めぐるさん(ライティングコーチ・文章術講師)の書かれた「誤用が多い「頭が上がらない」の本来の意味は? 使い方や例文を解説」という記事があります。
「頭が上がらない」は目上の人に対して使わない方がベター
「頭が上がらない」は、目上の人に使えるものなのか。
結論から言うと、避けた方が無難でしょう。
なぜなら、「頭が上がらない」は、引け目を感じて対等に振る舞えないというようなネガティブなニュアンスも併せ持つ言葉。
負い目を感じるほどの恩義の気持ちを表す言葉ではあるものの、相手によってはそのネガティブな意味の方で受け取られることもあるからです。
例えば、部下から上司に「部長には頭が上がりません」と伝えた場合、上司は「部下が逆らえないほどのプレッシャーを与えてしまっているのか」と勘ぐったり、「そんなに権威を振りかざしたことはないはずだ」と不快に感じたりする可能性があります。
誤解を避けるためにも、恩義の気持ちを直接伝えたい場合には、感謝していることをストレートに伝える言葉を選んだ方が喜ばれるでしょう。
「頭が上がらない」はどんな時に使えるの? (例文付き)
「頭が上がらない」は以下のような場面で使えます。例文と共に紹介します。
失敗をフォローしてもらった相手のことを誰かに話す時
例文
・自分のミスで取引先から契約を切られそうだった時、一緒に謝罪して助けてくれた上司には頭が上がらない。
迷惑を掛けたのに見捨てずにいてもらった時
例文
・高校時代、無茶をしていた自分を見捨てず、「やりたいことを見つけろ」と言い続けてくれた担任の先生には、今も頭が上がらない。
窮地に立っているところを助けてもらった時
例文
・妻の手術代が足りなかった時、「これも使って」とバイト代から出してくれた娘には頭が上がらない。
夫や妻のどちらかが優勢で権威が勝っている時
例文
・恐妻家の芸人さんが「妻には頭が上がりません」と言いつつも浮気をするのは、不思議でなりません。
相手の能力が圧倒的に高く、かなわないと感じた時
例文
・あの膨大な資料を一晩で読破してまとめ上げた彼女には、同期としても頭が上がりません。
「頭が上がらない」の蘊蓄
「頭が上がらない」と「頭が下がる」
「頭が下がる」とは、「敬服する。感心させられる。」(広辞苑)こと。
つまり、「頭が下がる思い」というのは、相手を尊敬している思いや、相手の言動に対して尊敬の念を抱いている事を表現する言い回しということになります。
「頭が上がらない」も「頭が下がる」も、人物のイラストを描けば同じような画になります。しかし、両者の内面は真逆ほどに違っています。
「頭が上がらない」と「うだつが上がらない」
「上がらない」つながりです。
「うだつが上がらない」は、「うだつが上がらないとは、いつまで経っても出世しない、生活が向上しないことのたとえ。また、身分がぱっとしない、幸せになれないことのたとえ。」(故事ことわざ辞典)です。
「うだつが上がらない」の語源は2つの説があります。
1つは、梁の上に立てて棟木を支える短い柱を「うだつ」といい、このうだつが棟木におさえられているように見えることから、頭が上がらない(出世できない)という説です。この意味では、「頭が上がらない」と「うだつが上がらない」は同義です。
もう1つは、商家などで隣りの家との境に設ける防火壁のことを「うだつ」といい、そのうだつを高く上げることを繁栄のしるしとしたことからとする説。
「うだつ」は「卯建」「宇立」と書きます。
うだつを上げるためには、それなりに費用が必要です。自己の財力を誇示するための手段として、商家の屋根上には競って立派なうだつが上げられたそうです。瓦屋根の装飾は、富の象徴でもありました。「うだつ」がある屋根が並ぶ街並みは、岐阜県美濃市や徳島県美馬市で見ることができます。