教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その50) 慣用句「鶴の一声」

小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第21回は「鶴の一声」です。教科書の表記は、「つるのひと声」となっています。

  

鶴の一声

 

「鶴の一声」の読み方

つるのひとこえ 

 

「鶴の一声」の意味

権威者・有力者などの、衆人を威圧し、否応なく従わせる一言。「雀の千声」と対にしてもいう。(広辞苑

 

「鶴の一声」の使い方

 「社長の鶴の一声で計画の方針が決まる」

 

「鶴の一声」の語源・由来

「鶴の一声」は、鶴の鳴き声に由来します。 

鶴は首が長く、鳴管(めいかん)と呼ばれる発声器官が他の鳥より発達しているため、金管楽器のように甲高い声で鳴きます。そして、その声は大きく、力強く、よく響き、遠くまで聞こえることで、他の鳥よりも迫力があります。このような特徴から「鶴の一声」は、大きな発言力を持つ人の一声に例えられるようになったようです。

 

「鶴の一声」の蘊蓄

「鶴」は特別な鳥

Wikipedia」によると、

ツルは古代中国の伝説では仙界に棲む鳥とされた。ツルは吉祥と長寿の象徴で、古来より高位高官の身に着ける装飾品に用いられた。

日本では昔話にもよく登場し、「鶴は千年、亀は万年」などカメと共に長寿の象徴とされている。他の動物より寿命が長いのは確かだが、実際の寿命は動物園での飼育の場合であっても50年-80年程度で、野生では30年位と推定されている。「鶴姫」など名前としても使われる。 折鶴、千羽鶴なども、日本の象徴となっている。

と、あります。

そうした視点で、「鶴」のでてくる言葉を集めました。(「故事・ことわざ・慣用句辞典オンライン」より)

鶏群の一鶴(けいぐんのいっかく)
平凡な人の中に、一人だけ際立ってすぐれた者がいることのたとえ。鶏の群の中に鶴が一羽混じっているということから。「群鶏の一鶴」ともいう。
出典 『晋書』

雀の千声鶴の一声(すずめのせんこえつるのひとこえ)
つまらない者がいろいろ言うよりも、すぐれた者の一声のほうが勝っているというたとえ。「鶴の一声」だけでも使われる。

鶴九皐に鳴き、声天に聞こゆ(つるきゅうこうになき、こえてんにきこゆ)
すぐれた人物は、どんな所にいても、その名声は世間に知れ渡るというたとえ。「九皐」は奥深い沢の意で、鶴がどんなに深い谷で鳴いても、その鳴き声は天に届くということから。
出典 『詩経』小雅・鶴鳴

鶴は千年、亀は万年(つるはせんねん、かめはまんねん)
鶴は千年、亀は万年生きるということから、長寿でめでたいことをいう。

掃き溜めに鶴(はきだめにつる)
つまらない所に、そこに似つかわしくないような優れたものがあることのたとえ。「掃き溜め」は、ごみ捨て場のこと。ごみ捨て場に舞い降りた美しい鶴という意から。