小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第24回は「猫の手も借りたい」と「猫の額」です。教科書の表記は、「ねこの手もかりたい」「ねこのひたい」となっています。
ある教科書は、「猫」のつく慣用句を集める課題を出しています。付録として「猫」のつく慣用句一覧を収録しています。
猫の手も借りたい
「猫の手も借りたい」の読み方
ねこのてもかりたい
「猫の手も借りたい」の意味
非常に忙しく手不足なさまにいう。(広辞苑)
「猫の手も借りたい」の使い方
「上から下までおめでた事、猫の手もかりたい忙しさ」 (浄瑠璃「関八州繋馬」二 1724年)
※「誰でもいい」という意味合いを含むので、相手に直接言うと失礼にあたります。
「猫の手も借りたい」の語源・由来
「猫の手も借りたい」の 由来は、近松門左衛門作の浄瑠璃「関八州繋馬(かんはっしゅうつなぎうま)」とされます。(上の「使い方」参照)
鼠を捕ること以外は何の役にも立たないような猫であっても、その手を借りたいと思うほど忙しいということから生まれたものです。
「猫の手も借りたい」の蘊蓄
「猫の手も借りたい」の犬版
「犬の手も人の手」「犬の手も人の手にしたい」
(犬の手までも人の手にして手伝わせたい意から) 忙しい時には、どんな少しの手助けでも欲しいということ。猫の手も借りたい。(精選版 日本国語大辞典)
「犬の手も人の手にしたい程取り込んで居るをりなれば」(「浮世草子」鬼一法眼虎の巻 三 1733年)
猫も犬も古くから人の近くで暮らしてきました。 しかしそれは牛馬のような労働力としてではなく、ペットとしてです。ペットであるがゆえに生まれ得た言葉ですね。
さて、どちらが猫好き、犬好きの言葉でしょうか。
猫の額
「猫の額」の読み方
ねこのひたい
「猫の額」の意味
(猫の額が狭いところから)土地などがきわめて狭いことの形容語。(広辞苑)
「猫の額」の使い方
「下の関は猫の額(ヒタヒ)ほどある所なれども、諸方の入込む湊にて」(「浮世草子」御前義経記 八 1700年)
「猫の額」の語源・由来
「猫の額」は猫の額が狭いことに由来する語ですが、はっきりとした語源は不明です。
「猫の額」の蘊蓄
場所が狭い時は「猫の額」 、量が少ない時は「雀の涙」
「雀の涙」
ごくわずかなもののたとえ。(広辞苑)
「安月給のことをこぼしてるんだから、今度、雀の涙ぐらい上がるらしいわ」(三浦朱門『セルロイドの塔』1959年)
スズメの語源としては、「スズ」はチュンチュンのように鳴き声を表しているとも、「スズ」は小さいものを表す接頭語「ササ」が変化したものとも言われています。スズメの「メ」は鳥を表す接尾語(ツバメ、カモメの「メ」)です。つまり、スズメの名そのものに小鳥という意味があるということです。
その小さなスズメが流す涙ですから、極めて少量というわけです。ちなみに、雀の涙は感情表現ではなく、目の乾きを潤すものです。
付録
「猫」のつく慣用句
窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)…《「塩鉄論」刑法から》追いつめられた鼠が猫にかみつくように、弱い者も追いつめられると強い者に反撃することがある。
猫に鰹節(かつおぶし)…猫のそばに、その好物の鰹節を置くこと。油断できないこと、危険であることのたとえ。
猫に小判…貴重なものを与えても、本人にはその値うちがわからないことのたとえ。
猫に木天蓼(またたび)お女郎(じょろう)に小判…大好物のたとえ。また、非常に効き目があることのたとえ。
猫の首に鈴を付ける…《猫に仲間を捕られる鼠(ねずみ)たちが集まって相談し、猫の首に鈴をつけることにしたが、実行する鼠はいなかったという西洋の寓話から》いざ実行となると、引き受け手のない至難なことのたとえ。
猫の子一匹いない…人が全くいないたとえ。
猫の子を貰(もら)うよう…猫の子をもらうときのように、縁組みが手軽に行われるようす。
猫の目のよう…あたかも猫の目(瞳孔)が周囲の明るさに応じて瞬時に大きさを変えるように、環境に順応して迅速に様変わりするさまを表現する比喩的な言い方。
猫も杓子(しゃくし)も…だれもかれも。なにもかも。
猫を被る…うわべをおとなしく見せかける。
猫を殺せば七代祟(たた)る…猫は執念深い魔性の動物であり、殺すと子々孫々までたたるという俗説。
猫を追うより魚をのけよ 猫を追うより皿を引け…猫を追い払うよりも魚を取りのぞくほうがよい。