教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その58) ことわざ「船頭多くして船山に上る」

小学校3・4年生の教科書に登場することわざの第15回は「船頭多くして船山に上る」です。

 

船頭多くして船山に上る

 

「船頭多くして船山に上る」の読み方

 せんどうおおくしてふねやまにのぼる

 

「船頭多くして船山に上る」の意味

指図する人ばかり多いため統一がとれず、かえってとんでもない方に物事が進んでゆくことにいう。(広辞苑

 

「船頭多くして船山に上る」の使い方

 皆さんどなたが頭株というわけではないので統一がとれません。つまり船頭多くして船山にのぼるの譬たとえで、何か一つ問題がおきますと、すぐに議論倒れで中々果てしがつきません(夏目鏡子漱石の思ひ出』1928年)

 

「船頭多くして船山に上る」の語源・由来

「船頭多くして船山に上る」の明確な語源・由来は不明です。

一艘の船に何人もの船頭(リーダー)がいると、指揮系統がバラバラになって方針や命令が決まらないために、船がとんでもない方向に行ってしまうことがあるということからきています。 

中国には「木匠多、蓋歪房」(大工が多すぎると歪んだ家が建つ)、イギリスには「Too many cooks apoil the broth.」(料理人が多すぎるとスープがうまくできない)ということわざがあります。

いずれも生活知から生まれたもののようです。

 

「船頭多くして船山に上る」の蘊蓄

「船頭多くして船山に上る」の類義語

船頭多くして船動かず……船頭が多いと進む方向が決まらず、船が動かない。
役人多くして事絶えず……役人が多過ぎると、仕事が複雑になってかえって仕事が捗らない事。
家を道端に作れば三年成らず……家を人目に付く道端に建てると、色々な人が口出しをしてきて色々な意見に左右されるので三年経っても家が建たない。

 

「船頭多くして船山に上る」の対義語

三人寄れば文殊の知恵……凡人も三人集まれば、文殊(菩薩)にも劣らない知恵を出すことができる。
三人にして迷うことなし……一人で進むよりも三人いれば知恵を出し合い、よりスムーズに進むことができる。
桶は桶屋……桶の事に素人が口出しするよりも、桶は桶の専門家に任せると良い。