教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その61) 慣用句「涙を呑む」

小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第23回は「涙を呑む」です。教科書の表記は、「なみだをのむ」となっています。

  

涙を呑む

 

「涙を呑む」の読み方

 なみだをのむ

 

「涙を呑む」の意味

①泣きたいのを泣かずにこらえる。
②泣きたくなるような経験をする。多く勝負に敗れた時に用いる。(広辞苑

 

「涙を呑む」の使い方

わずかの差で涙を呑んだ。 

 

「涙を呑む」の語源・由来

「呑む」には、「こらえておもてに出さない」 (広辞苑)という意味があります。「声を呑んで泣く」「恨みを呑む」のように使います。

「涙を呑む」もこれらと同じ用法で、「涙をこらえておもてに出さない」という意味になります。

 

「涙を呑む」は、「涙を飲む」と表記しても差し支えありません。

 

「涙を呑む」の蘊蓄

「呑む」の蘊蓄

「呑む」には「こらえておもてに出さない」以外にも多くの意味があります。

以下、広辞苑より引きます。

 

①口に入れて噛かまずに食道の方に送りこむ。喉のどに流しこむ。特に、酒を飲む。

万葉集20「わが妻はいたく恋ひらし―・む水に影かごさへ見えて世に忘られず」。

草本平家物語「この茶を―・うで息をついで、まちつとお語りあれ」。

仁勢物語「舞ふつ歌ふつ―・みけるを、思ひの外に御烏帽子も落ちてける」。

「―・む相手を探す」「薬を―・む」


②吸い込む。吸う。

東海道中膝栗毛初「日の短い時にやあ煙草を―・まずにゐにやあならねへ」。

「思わず息を―・む」


③こらえておもてに出さない。

「声を―・んで泣く」「恨みを―・む」


④圧倒する。また、見くびる。

好色一代女1「其の男、大夫に気を―・まれ」。

「敵を―・む」「雰囲気に―・まれる」


⑤うけいれる。

「清濁併せ―・む」「組合の要求を―・む」


⑥姿を包み込んで見えなくする。

「濁流が人を―・む」「人込みに―・まれる」


⑦収める。隠し持つ。

「懐に短刀を―・む」