小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第33回は「水をさす」です。
水をさす
「水をさす」の読み方
みずをさす
「水をさす」の意味
うまくいっているのに邪魔をして不調にする。(広辞苑)
「水をさす」の使い方
二人の仲に水をさす。
「水をさす」の語源・由来
「水をさす」の由来は、適温のお湯や適度な濃さの料理に水をそそぐ様子にあります。お湯はぬるく、料理は味が薄くなり台無しになってしまいます。このことから、良い状態のものに邪魔をして乱すことを「水をさす」と言うようになりました。
なお、「さす(差す)」 には「注ぐ、入れる」の意味があります。
「水をさす」の蘊蓄
「水をさす」の類義語
「横やりを入れる」…第三者が横から人の話や仕事に口を出して妨害すること。
「さす」を含む故事成語・ことわざ・慣用句
噂をすれば影がさす(うわさをすればかげがさす)
噂をすれば影がさすとは、人の噂をしていると、ちょうどそこへ噂の本人が現れることがあるということ。
釘を刺す(くぎをさす)
釘を刺すとは、後で問題が起こらないように念を押すことのたとえ。
釘を打って固定するの意から。
昔の日本では釘を使わず木材を組み合わせて建築物を作っていたが、江戸時代の中頃から念のために釘を刺して固定するようになった。
鹿を指して馬と為す(しかをさしてうまとなす)
鹿を指して馬と為すとは、理屈に合わないことを、権力によって無理に押し通すことのたとえ。
『史記・秦始皇本紀』にある以下の故事に基づく。
秦の始皇帝が死んだ後、悪臣の趙高が自分の権勢を試そうと二世皇帝に鹿を献上し、それを馬だと言って押し通してみた。
しかし皆が趙高を恐れていたので、反対を唱えた者はおらず、「鹿です」と言った者は処刑された。
「鹿を馬」「馬を鹿」ともいう。
死に馬に鍼を刺す(しにうまにはりをさす)
死に馬に鍼を刺すとは、死んだ馬に鍼で治療を施しても生き返ることはなく効果がないことから、なんの効果もないことのたとえ。また、絶望的な状況でも、万が一の期待をこめて最終手段をとってみることのたとえ。
流れに棹さす(ながれにさおさす)
流れに棹さすとは、川の流れに乗って進む舟に、棹をさすことでさらに勢いをつける意味から、好都合なことが重なり順調に事が運ぶことのたとえ。
「棹さす」の蘊蓄
「智に働けば角が立つ 情に掉させば流される…」
国語辞典編集者の神永曉さんが「日本語、どうでしょう?」に書かれていた記事です。
「棹さす」は「流れに棹さす」の形で使われることが多いのだが、文化庁が発表した2012年(平成24年)度の「国語に関する世論調査」でも、本来の「機会をつかんで時流にのる、物事が思い通りに進行する」という意味で使うという人が23.4%、従来なかった「逆らう」「逆行する」の意味で使うという人が59.4%と、逆転した結果が出ている。ただ、面白いことに文化庁は数年おきにこの語の調査を行っているのだが、本来の意味で使うという人は2002年が12.4%、2006年が17.5%、そして2012年が23.4%と、調査の度にわずかながら増えている。ただ、意味がわからないという人も2012年調査では20代以上で10%を超えているので、このことば自体があまり使われなくなっているということも考えられる。
ところで、
夏目金之助さんのペンネーム「漱石」は、故事成語の「漱石枕流(そうせきちんりゅう)」に由来します。「漱石枕流」の意味は「石に漱(くちすす)ぎ流れに枕する」と読み、「こじつけて言いのがれること。まけおしみの強いこと。」という意味です。
出典は『晋書(しんじょ)』の「孫楚伝(そんそでん)」です。
西晋の武将、孫楚が、「流れに漱(くちすす)ぎ、石に枕す。(意味:俗世間から離れ、山水の中で自由に生活をする。)」を、誤って「石に漱(くちすす)ぎ、流れに枕す。」と言ってしまったのを、友人の王済が指摘をしたところ、
「石に漱ぐのは歯を磨くためであって、流れに枕をするのは耳を洗うためだ!」
と無理にこじつけた、と『晋書』の一文にあります。