教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

日本語探訪(その89) 慣用句「道草を食う」

小学校3・4年生の教科書に登場する慣用句の第35回は「道草を食う」です。

  

道草を食う

 

「道草を食う」の読み方

 みちくさをくう

 

「道草を食う」の意味

(馬が路傍の草を食って進行が遅くなる意から)途中で暇を費やす。横道にそれて手間どる。(広辞苑

 

「道草を食う」の使い方

道草を食わずに本筋を進めよう。 

 

「道草を食う」の語源・由来

「道草を食う」の語源は、馬が道端の草を食っていて進行が遅れることにあります。 

  

「道草を食う」の蘊蓄

「馬」由来の言葉 

「引退馬牧場 ヴェルサイユリゾートファーム」のブログの記事に、馬由来の言葉が紹介されています。

例えば、ラチが開かない
物事がうまく進まなかったり、話が進まないと使いますが、その通り競馬のラチ(柵)からきています。

 

デットヒート
この両者のデットヒートが!という様なものがありますが、これも元は競馬由来。

 

はなむけ。というのもあります。
せめてものの、はなむけだ。なんて漫画の吹き出しでも出てきそうな言葉ですが、
これも馬由来。
大昔は遠くに旅だったりする際、馬の鼻の先を旅立つ方向に向けて安全や成功などを祈っていた風習があるそうです。
そこから今日も使われてるんですね。

 

あとは、バテる
バテたわぁ・・・なんて会話をしますが、これも実は競馬由来。
その意味の通り、ゴール前でスタミナ切れなどの際、馬の脚がバタバタになってねぇ。なんて言いますが、
そこからバタバタ、果てる、などの言葉が変化省略してバテるという言葉になったそうな。

 

意外なのは、コーチ
監督、コーチなどの役職のコーチ。これも馬由来。
勿論日本語ではなく外国語由来ですが、コーチという意味は四輪馬車。
あの、外国とかで馬車に乗るあれです。
それが馬車で目的地まで送るという言葉の意味でも使われる様になっていき、
それが指導者などにも当てはまる事から、昨今コーチと言われる様になったそうです。
今では、会社の組織論やリーダーシップ論などから、コーチングという言葉が増え、
コーチング研修なども多くなったと思いますが、馬由来なんですね。

 

 

「道草を食う」の類語は「油を売る」

道草を食う…途中で暇を費やす。横道にそれて手間どる。(広辞苑

油を売る…無駄話に時を過ごす。また、用事の途中で時間をつぶす。(広辞苑

どちらも怠けていることには違いありませんが、「語彙力.com」で三角彩子さんが次のように書いておられます。

「油を売る」と「道草を食う」の使い分け方


「油を売る」は無駄話などをして一時的に仕事を怠けるという意味でした。

「道草を食う」は目的地に行く途中で他のことをして時間をかけるという意味でした。

 

どちらもサボりではありますが、

・「油を売る」は無駄話などをして怠けること
・「道草を食う」は目的地に行くまでに余計なことをして時間をかけること
という違いがありましたね。

 

このことを念頭に置いて例文を見ていきましょう。

 

【例文】

①彼はまた取引先で油を売っているに違いない。
②彼は道草を食っていて取引先から帰ってこない。


「油を売る」方では、「彼」は目的地である取引先に出向いて、そこで仕事と関係のない無駄話などをして時間を潰してなかなか帰ってこないのでしょう。

 

一方、「道草を食う」の方では、取引先の行き道か帰り道でどこか必要のない所に立ち寄ったりして、結果帰社時間が大幅に遅れているという風に読み取れるわけです。

 

「道草」の方は「途中で」余計なことをしているということなので、例えば「取引先で道草を食う」とは言いません。

 

このような違いがあります。

 

なお、「油を売る」については、 日本語探訪(その13)慣用句「油を売る」(2021.3.17)を参照してください。