教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

不登校、いじめ「過去最多」を考える

文部科学省が実施する「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果を、本日(2023年10月4日)、報道機関が一斉に報じています。

 

不登校 約29.9万人 過去最多

いじめ 約68.2万件 過去最多

 重大事態  923件 過去最多

自殺     411人 過去2番目

暴力行為 約9.5万件 過去最多

 

不登校の詳細は次のとおりです。

NHKニュースによると、

小中学校を30日以上欠席した不登校の状態にある子どもは、前の年度から5万4000人余り、率にして22%増え、29万9048人となりました。10年連続で増加し、過去最多となっています。

このうち
小学生が10万5112人で、10年前の2012年度の5倍に、
中学生が19万3936人で、10年前の2倍に増えています。

朝日新聞の記事によると、

22年度の不登校の小学生は10万5113人、中学生は19万3936人で計29万9049人(前年度24万4940人)。

在籍する児童生徒の3・2%が不登校だった。

 

これはもう、私などの想像力も思考力もはるかに超えた事態です。

 

こうした事態に文科省は「対策強化」を図るといい、専門家は「支援体制」を提言するコメントを出しています。

いずれも、対症療法です。現に悲鳴を上げている子らへの手当ては必要です。しかしそれは、問題の解決とは別ものです。

 

朝日新聞に大阪公立大学の山野則子さんのコメントがあります。

それによると、不登校の増加のポイントは2点です。

1つは、コロナ禍による家庭の経済的不安などが子どもにストレスを与える状況が続き、不登校という形で強く表れた。

もう1つは、コロナの影響で学校以外の居場所が認められてきた影響がある。

 

コロナ禍によるストレス云々は、年次解消に向かうでしょう。

問題は、「学校以外の居場所が認められてきた」事実です。私はそれを否定的に評価するものではありません。事実として、この間の経緯は登校圧力をいくらか弱める働きをしました。そして、当事者にとっても傍目(はため)にとっても不登校のハードルを下げました。このことは、厳として残り続けると私は考えています。

 

不登校も、いじめも、暴力行為も、あられ方は違えど子どもの発する「シグナル」と捉えることができます。(行為を肯定しているのではありません)

「シグナル」を表出した子どもたちの背後に、どれほどの「シグナル予備軍」の子がいるでしょう。想像を絶する数字になるはずです。

 

子どもたちにとって学校が「息苦しい」のであれば、そのもとに切り込まなければ問題は解決しません。

「息苦しさ」の正体はなんなのでしょう。

 

私は、根本的にはいまの学校制度そのものではないかと思います。「学制」以来続いている教室のあり方、授業のあり方が子どもたちとミスマッチを起こし、破綻しかけているように感じます。途方もなく大きな「教育制度」の問題です。

 

さらに、「学力向上」と「ICT教育」が子どもたちを分断し、協働の学びをこわす悪い方向に作用しているようにも感じます。

「個に応じた」とか「一人ひとりを大切に」とかいったフレーズが溢れています。

今朝の「天声人語」は、黒柳徹子さんの『続 窓ぎわのトットちゃん』発刊に関するもので、その中でトットちゃんのトモエ学園時代に触れていました。

さて、上に掲げたフレーズは、トットちゃんのような個性的な子をその個性のまま成長させるものでしょうか。それとも「30点」の子も「50点」の子も、だれもかれもが「80点」をめざして「個に応じた」課題に取り組むというものでしょうか。言うまでもなく後者であって(表現は極端ですが)、タブレットはそのための強力なツールになっています。これって本当に一人ひとりが大切にされていることになるのでしょうか。

これもまた大きな「教育施策」「教育方法」の問題です。

 

老犬の遠吠えでは何の解決にもなりません。

専門家と称する方たちも、報道機関の方たちも、もっと本質的なところで発信してほしいと強く願います。