年金の未来予想図
今回は、それをもとに年金の将来見通しを検証します。
【前提条件】
■ 年金保険料は、現在の水準を維持する。
■ 年金給付額は、マクロ経済スライドで調整する。
(詳細は、前回の記事「退職後を生きる(その5)年金のこれから」を参照)
【確定事項】
■ マクロ経済スライドによる調整は、
厚生年金は2025年まで、
■ マクロ経済スライド調整後も、所得代替率50%を確保する。
■ 所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、
給付水準調整を終了し、
給付と費用負担の在り方について検討を行う。
年金の将来は、これからの経済成長率によって決まります。
財政検証では、向こう30~40年の経済成長率をケースⅠ=0.9%、ケースⅡ=06%、ケースⅢ=0.4%、ケースⅣ=0.2%、ケースⅤ=0%、ケースⅥ=-0.5%の6つのケースを想定しました。
厚労省は「ケースⅢ」あたりを現実的と考えているようです。その場合、マクロ経済スライドによる調整が終了する2047年の年金受給は次のようになります。
所得代替率は50.8%と2019年比で10%以上下がりますが、経済成長(物価、賃金上昇)になり金額は多くなります。(このことは、年金の仕組み・特徴のところで触れました)
私は、何の根拠もありませんが、政府の見通しというのは甘いと思っています。そこで、向こう30~40年の経済成長率が0%という相当悪い「ケースⅤ」で試算してみました。
この場合、2043年で所得代替率50%を維持できなくなりますので、何らかの検討が加えられることになります。無策のまま調整が続くと、44.5%まで下がるということです。
もし仮に、これが現実になった場合…
年金水準を金額で表すのは本当は正しくありません。しかし、保険料と受給額の「損得勘定」は金額表示が一番分かりやすいです。
夫婦の基礎年金が10.2万円ということは、ひとり分は月額5.1万円です。この金額で20年間受給したとすると、総受取額は1224万円になります。一方、保険料は限度額の1.7万円で40年間掛けたとして、816万円です。現行の2倍リターンが1.5倍リターンになる計算です。
もしも「ケースⅥ」であっても、保険料の掛け損ということにはならないということです。
次に、少子高齢化の問題です。
これは、年金を支える側と支えられる側の人口バランスの問題です。
結論から言えば、これから25年~30年が正念場です。
2020年の年代別の人口グラフを見ると、年金受給世代(グラフの「赤」「オレンジ」部分)が厚く、現役世代(グラフの「青」部分)が細っていく「逆ピラミッド」型です。
次に、2065年のグラフを示します。
国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、今から25年~30年後には大体こうした形のグラフになり、22世紀初めまでほぼ同様の形が維持されます。(総人口は減り続けます。)
つまり、年金における少子高齢化の問題は今から25年~30年でほぼ解消し、その後はその時点のレベルで安定する見込みです。
したがって、財政検証で示された悪い方の想定による見通しが、現役世代の人たちの年金水準と考えてよいと思われます。
年金の未来予想は、決して明るくはないけれど、悲観することもない。年金を一方の柱としながら、もう一方の蓄えの柱を用意していくことが現実的対応かと思います。