ある季刊誌が「小学生のうちに身につけたい力」という特集を組みました。
そこで取り上げられたのは、次の4つの「力」です。
やり抜く力
伝える力
思考力
自己肯定力
いずれも大事な力だと思います。
「小学生のうちに身につけたい力」がこの4つだけかどうかは議論があって然るべきです。しかし、この4つを「小学生のうちに身につけたい力」に含めることには特に異議はありません。
私は新聞広告を見ただけで、季刊誌そのものを読んでいません。でもなんとなく受験学力につながる「力」なんだろうなという気がします。
趣旨がそうであったとしても、これらは広義での「生きる力」としても必要な「力」だと思います。
「生きる力」という視点から、私には4つの上に加えたい「力」があります。
「生き切る力」です。
私は、小学校の教員でした。
多くの子どもたちと出会い、そして送り出してきました。
卒業前の「最後の授業」で、あるいは卒業式のあとのホームルームで、伝え続けてきたメッセージがあります。
人生は石ころだらけです。
何度も何度もつまずくでしょう。
つまずいたら、やり直せばいいのです。
遠回りをしたっていいのです。
ときには、逃げたっていいのです。
覚えておいてください。
どんなときも、あなたはひとりではありません。
あなたの周りには、あなたにつながる幾人もの人がいます。
あなたにつながる人たちは、どんなときもあなたの味方です。
困ったときこそ頼るときです。
そして、どうかどうか生き切ってください。
明けない夜はありません。
子どもたちの自死のニュースに接するたびに、胸が潰れる思いがします。そして、どんなことがあっても「死」という選択肢を選ばない、生き切る力を育てる教育の重要性を強く感じます。
「自己肯定力」は、「自尊感情」「自己有用感」「セルフエスティーム」などと同義の言葉です。「自分に自信を持つ」といった意味です。
学力の文脈では、「できる」という自信です。
「生き切る力」の文脈においては、「自分が生きていること」「自分がそこに存在していること」「自分が人(社会)の役に立っていること」に対する自信です。
「生き切る力」を下から支えるのが「自己肯定力」で、「やり抜く力」「伝える力」「思考力」は「生き切る力」を太く、強く、確かなものにする要素です。
結果としてそれが受験学力につながるならば、「生きる術(すべ)」として結構なこと。
「受験学力」と「生きる力」は、二項対立の関係ではありません。
「生き切る力」を真ん中に据えた「学力観」「教育観」、そして「子育て観」がスタンダードになることを願ってやみません。