教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

鹿島和夫さんの訃報に接して

神戸市で長く小学校教員をされた鹿島和夫さんが亡くなられたことを、今朝(2023.3.28)の朝日新聞の読者投稿で知りました。

 

 

地元・神戸新聞のコラム「正平調」が2月25日の記事で取り上げていますから、亡くなられたのは1カ月も前だったようです。

せんせい、あのね、わたしは、せんせいと会ったことはありません。だけど、せんせいの書いた本をたくさん読んで、大切なことをいっぱい学びました。だからせんせいの教え子です◆家にお金がなくて、つらい経験を何度もして「貧乏な家の人の気持ちが分かる先生になっておくれ」とお母さんに頼まれたそうですね。最初は「でもしか先生」でしたが、児童文学者になる灰谷健次郎さんと出会い、教育の魅力に気づいたと読みました◆せんせいが、1年生との交換日記をまとめた本「一年一組 せんせいあのね」は、日本中の教室でお手本になりました。複雑な家庭の子、障害のある子、話すのが苦手な子。どんな子にも伝えたい思いがあります。それを名人芸のように引き出しました◆毎朝、「あのねちょう」を受け取ると下校時には赤ペンで感想を書いて返します。ノートを開く時、子どもの心はどんなにときめいたでしょう。でも、最近の学校は忙しすぎて、交換日記はずいぶん減ったそうです◆そのせんせい、神戸の小学校で長く教壇に立った鹿島和夫さんが、87歳で亡くなった。現役の先生たちに、無理を承知で提案がある◆今こそ「あのねちょう」をやりませんか。聞こえにくい声を聴き取るために。せんせい、あのね。2023・2・25

 

鹿島和夫さんは、小学校1年生の子の多くが書く日記スタイルである「せんせいあのね ……」を始めた人です。

 

鹿島和夫、通称「ダックス先生」。

 

私は、ダックス先生のことを灰谷健次郎さんを通して知りました。1983年のことでした。

 

灰谷健次郎著『きみはダックス先生がきらいか』

         (1981.4.30 大日本図書)

鹿島和夫さんの実践をモデルにした児童文学です。

兎の眼』や『太陽の子』に出会ったあと、灰谷さんの世界に灰谷さんの作品を読みあさった時期がありました。そんななかで出会った1冊です。奥付には1983年5月の第25刷とあります。

私は、この作品から児童理解や学級経営など多くを学びました。

また、何度も読み聞かせに使わせていただき、子どもたちにも紹介しました。子どもたちにも出会ってほしい1冊です。

ただ、アマゾンを見ると絶版になっているようです。古書店か図書館で探して読んでほしいです。

 

鹿島和夫さんの著書を2冊紹介します。

 

鹿島和夫・灰谷健次郎『一年一組 せんせいあのね』

             (1981.12.1 理論社

まさに「せんせいあのね」の世界です。

これも絶版になっているようです。古書店か図書館で探して読んでほしいです。

 

鹿島和夫著『ぼくだけほっとかれたんや』

      (1983.4 フレーベル館

アマゾンには「1983.1.1」発行となっていますが、私の持っている初刊本には「昭和58年4月 第一刷発行」とあります。

鹿島さんが出会った子どもを主人公にした、小学校中・高学年向けの児童文学です。

3つの物語が紡がれています。

「あさがお」

「のらいぬ」

「ぼくだけ ほっとかれたんや」

子どもだけでなく、子ども育てにかかわっいる大人にも出会ってほしい1冊です。税込み1210円の現役本のようですが、各サイトを見ると入手が困難みたいです。これまた、古書店か図書館で探してでも読んでほしいです。

 

絶版には出版社の事情もあるでしょうが、時代ということもあるでしょう。鹿島和夫さんの世界も過去となりつつあるということです。

しかし、時代とか社会的背景といったものには関係なく、教育や子育てには「不易」のものがあります。

鹿島和夫さんには今もなお色あせることなく学ぶことが山とあると、私は強く思います。