教育逍遙 -小学校教育の小径をそぞろ歩き-

小学校教員として歩んできた小径が、若い仲間のみなさんの道標になることを願って…。

人権教育2022⑤ 人権教育の「流行」(その3)

高速大容量通信時代のキャリア教育

 

日本でスマートフォンスマホ)が使われるようになったのは、 2007年のiPhone発売および2008年のAndroid端末発売からです。

「4G」(フォージー、「4th Generation」の略で「第4世代移動通信システム」の意)によって高速大容量通信サービスが始まったのが、2012年です。

 

つまり、いまの小学生たちは、ものごころついたころからスマホタブレットを含む)があって、高速大容量通信が当たり前であったわけです。

最近の大学生の中には、スマホだけでレポートや論文を書く人もいるそうです。パソコンを使ったキーボード入力など、遠からず過去の遺物になるかもしれません。

 

社会はいま、「4G」から「5G」への移行期にあります。

数年のうちには、「超」高速大容量通信が普通になるでしょう。

それが、いまの小学生たちが成人していく社会です。

そして、この子たちが社会人として活躍する時期には、「6G」という「超超」高速大容量通信社会が待っているはずです。

 

大容量の双方向通信は社会のあり方を変えていくことになります。

大病院の専門医による地方病院の患者の遠隔手術など、夢のような話がすぐ手の届くところまで来ています。

遠隔授業などというものも、飛躍的に向上するでしょう。

それ以上の先は、私には想像することさえ難しいです。

 

1990年代は「2G」の時代で、携帯メールを使えるようになりました。小学生の利用はほとんどなかったと思います。Windows3.1やWindows95でパソコンが普及し、キーボードに慣れ、文書作成や表作成のスキルを身につけた時期です。

 

2000年代は「3G」の時代で、携帯電話でインターネットを利用できるようになりました。画像の送受信ができるようになって、情報モラル教育が始まる時期です。

 

2010年代は「4G」の時代で、スマホで動画を送受信できるようになりました。

 

2020年代は「5G」の時代で、リアルタイムでの双方向動画通信ができるようになります。

 

2030年代はおそらく「6G」の時代で、……。

 

 

さて、「人権」の視点で高速大容量通信時代のデジタル社会を見たとき、課題となるのは何でしょう。

高速大容量通信時代の「キャリア教育」として

高速大容量通信が社会のあり方を変えるということは、人の生き方が変わるということです。したがって、高速大容量通信時代を生きる術(すべ)として身につけたい力のあれこれを、「キャリア教育」として構築することが求められます。

 

すべての子にスキルを

学力保障の課題がそうであったように、ICT教育においても、親の学歴や経済格差に左右されることなく、すべての子に活用スキルを保障しなければなりません。ハード面とソフト面からのサポート態勢を整えることが必要です。

 

情報モラル教育の充実

高速大容量通信においては得られる情報量が「3G」の時代とは桁違いです。それは、流出してしまう情報量も桁違いであることを意味します。

「3G」の時代、20年前に作成された情報モラル教育のカリキュラムもバージョンアップが必要です。

情報スキル教育と情報モラル教育の比重を見た時、俄然スキルに偏っている現状があります。この比重が逆転するほどに、情報モラル教育に注力すべきです。

たとえばSNSを使った誹謗中傷や画像・動画を含む個人情報の曝し行為を考えます。

これらの行為は情報端末によって為されていますが、その根っこはすでに端末に触れる前にあります。悪口、陰口、仲間外しといった幼子(おさなご)たちの社会にもある問題と同根です。

悪口、陰口、仲間外しなどの問題とSNSの問題が1本の糸でつながってカリキュラム化されていないとしたら、この機会に見直してほしいものです。

 

アナログの人間関係づくり

高速大容量通信時代のデジタル社会は、遠隔手術、遠隔授業、遠隔流通、遠隔勤務などなど、非対面型の社会を推し進めていくことになるでしょう。

だからこそ、教育の場ではアナログ(対面型)の人間関係づくりをことのほかだいじにしたいと思います。

「4G」の今でさえ、ちょっとした用事は電話よりもLINEで済ませています。対面よりも電話、電話よりもLINEのほうが楽(心理的負担が小さい)です。なぜ楽かというと、相手の様子をうかがったり、余分な気配りをしたりしなくて済むからです。

しかし、LINEが相手の端末に届くところまではデジタルでも、それを目にするのは感情をもった人間です。

つまり、直接顔を見たり声を聞いたりしないので直接様子をうかがったり気配りをしたりしなくて済む分、想像力が必要になります。その想像力は対面型の直接体験によって得られます。

非対面型の社会を生きていく子らであるからこそ、対面型の学校社会でアナログ(対面型)の人間関係づくりを十二分に経験させてやることが重要なのです。